西出さんはビジネスマナーの中には「会社や部署、組織などの考えによるもの」があるとし例を2つ挙げ、その捉え方についても解説。
【その1】おじぎハンコ
例えばハンコを目上の人にお辞儀しているように押す『おじぎハンコ』というものがあります。LINE交換の話と同じく、こちらも以前に取材を受けて初めて知りました。おじぎハンコについて異論を発する方もいらっしゃいますが、組織の全員が納得して行っているのであればそれはそれでよいのだと思います。問題なのは「やりなさい」と強要したり「しなければいけない」「それがマナーだ」などという情報が一人歩きすることです。会社の風土だったり社内で推奨されているのであれば実施する方がベター。なぜならば、その会社の一員だからです。「会社の言いなりになっている」と考えるのではなく、“協調性”として捉えましょう。ちなみに弊社では全スタッフに「印鑑はまっすぐ押しましょう」と伝えています。
【その2】オンラインでの上座・下座問題
この話は“LINE交換時の携帯電話位置”に通じるものがあると感じますね。本来これらに「上下はない」と考えるのがマナーであると言えます。ただし、職場で浸透しているのであれば実践することがマナーとなります。新たなコミュニケーションツールの普及によって、今までになかったマナーが生まれることがあります。とはいえ、どの時代・どの国でも「相手の立場に立つ」という思いやりはマナーにおいて共通の心です。今はマナーの型も多種多様になっていますので、置かれた状況によって要・不要はご自身で判断していくのが賢明です。まさに“選択の時代”と言ってもよいですね。
☆☆☆☆
取材の中で西出さんは「マナーの基本とは、相手の立場に立ってみること」「相手に嫌な思いをさせないこと」と何度も繰り返していました。世にあるマナー全てを鵜呑みにしなくてもいいのでしょうが「マナーは守るものではなく、自分を守ってくれるもの」という西出さんの言葉に、『メカラウロコ』を感じた筆者でした。
(取材・文=宮田智也 / 放送作家)