普段、何気なく使用しているコンセント。よく見てみると、左右の穴のサイズが微妙に違うことに気付きます。しかし、一般的なコンセントの差し込みプラグの長さや幅は左右ともに同じサイズで、方向を確認してから差し込むこともほとんどありません。穴の大きさが不揃いなのはなぜ? その理由を、電気や配線器具に関する調査や研究などを行う「日本配線システム工業会」に聞きました。
日本配線システム工業会によると、壁に取り付けられた一般的な家庭用コンセントの差込口のサイズは、右が7ミリ、左が9ミリ。右側の小さい穴が「電圧側」、左側の大きい穴が「接地側」と呼ばれ、それぞれ違った役割を持っているそうです。
右側の「電圧側」は、0ボルトを中心に、西日本では1秒間に60回、東日本では1秒間に50回電圧が上下して電流が流れ込む、いわば“電気の入口”の役割を持っています。左側の「接地側」は、地面に接続されていて、“電気の出口”のような役割を担っています。このように、それぞれ異なった極性を持った2つの穴を見分けるため、穴の大きさに差をつけているということです。
しかし、一般的な家電製品の差し込みプラグの2本の刃のサイズは、それぞれまったく同じであることがほとんどです。これは、左右どちらの向きにプラグを差し込んでも問題ないように、家電製品側で工夫されているからだそうです。そのため、通常は電源プラグの極性を気にする必要はありません。
ただし、一部の業務用の計測器などには、左右の極性を合わせる必要がある製品が存在します。その場合は、左右のプラグの刃の幅が異なり、逆向きには差し込めない仕様になっているそうです。
ちなみに、電源プラグの先にある金属の板は「栓刃」と呼ばれます。この栓刃の真ん中のあたりにはそれぞれ小さな穴が空いていますが、この穴は、コンセントに差し込んだプラグを固定するために存在しています。
コンセントの穴の内側には、電源プラグを差し込んだときに、栓刃をはさみ込んで通電する「刃受けばね」と呼ばれる部品が設置されており、電源プラグを充分に差し込むと、栓刃の丸い穴に刃受けばねの突起が入り、最後まで差し込んだことを感触で知らせたり、差し込んだ後、コードの重みで電源プラグがコンセントから簡単に抜けないようにする効果があるそうです。
スマートフォンの充電から家電製品の使用まで、ほとんどの人が毎日のように目にするコンセント。小さな穴の中には、開発者たちの技術と工夫がつまっているようです。
(取材・文=村川千晶/放送作家)