―――特に人気のふろくは?
【西村さん】 やはり、「カメラ」が1番人気でした。当時、カメラは1台数万円もする大人の嗜好品。そんなカメラを子どもが自分で作ってしまおうという内容で、60年代にはフィルムで撮影できるカメラもありました。のちに、印刷紙に撮影して自分で現像、焼き付けまでできるスタイルが定着しました。初めて手にする本物カメラで、当時の子どもたちは夢中で写真を撮り、押し入れで現像する「小学生カメラマン」が町中に溢れかえっていました。
「植物の栽培セット」は低学年向けふろくに欠かせないもので、定番のアサガオやヒマワリをはじめとした植物のバリエーションにはこだわっていました。変わったものですと、ツタンカーメンと一緒に埋葬されていたエンドウ豆から広がった種を当時の編集部員が独自のルートで入手し、バイオ技術で増やして1986年に「ツタンカーメンのエンドウ」としてふろくにすることにも成功しました。
―――現在、『科学』はどうなっているのですか?
【田中さん】 現在は大人向けの『大人の科学マガジン』が不定期で、小学生向けの『学研の科学』が年に3回のペースで刊行されています。「大人の科学マガジン」は当時の「科学」を楽しんでくれた方向けに20年前に創刊したのですが、小学生向けのものは昨年の7月に12年の時を経て復刊しました。小学生向けの復刊第一号は発売日前に予約で完売になるほどの人気ぶりでした。
現在の小学生向けの「科学」では、購入してくれた子どもと編集部員が質問などのやり取りができるオンラインのコミュニティサイトを立ち上げていたり、オンラインイベントを多数開催していたりなど、より子どもたちに理科を好きになってもらえるような進化を遂げています。今では『科学』を使って海外の学校で授業を行うなどの取り組みもあり、これからは国内はもちろん世界にも『学研の科学』を広げていくつもりです!
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昭和のメガヒット学年誌『1〜6年の科学』。ふろくの実験キットで遊んだ思い出のある方も多いのではないでしょうか。なんと、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士候補に選出された諏訪理さんが宇宙飛行士を目指したきっかけも『1〜6年の科学』だったとか。発売からおよそ60年が経つ『学研の科学』は今もなお、“未来の科学者”を育てているのかもしれません。
※ラジオ関西『Clip』2023年5月11日放送回より
(取材・文=藤田慶仁)