真言密教の聖地・高野山(和歌山県高野町)にある、鎌倉幕府の初代将軍、源頼朝の妻・北条政子ゆかりの世界遺産・金剛三昧院(こんごうさんまいいん)で、建立800年を迎える「経蔵(きょうぞう)」内部が初公開されている。
経蔵とは、仏教寺院の建造物のひとつ。釈迦の教えが集約された仏教の経典をはじめ、仏教に関する様々な書物を収蔵する。
金剛三昧院の経蔵は、1223(貞応2)年に建立された。建築様式が東大寺(奈良市)の正倉院と同じ「校倉造(あぜくらづくり)」で現存状態が良く、1922(大正11)年、国の重要文化財に指定された。
「高野版」と呼ばれる、経典が書かれた版木(木版印刷で、文字や絵などを彫ったもの)が、500枚以上収められている。
しかし、2020年9月の台風で、標高約900メートルの高野山にある金剛三昧院周辺は、突風に襲われた。境内にある樹齢400年といわれる「六本杉」の枝が折れ、このうち1本が経蔵の檜皮葺(ひわだぶき)の屋根に突き刺さり、縦横約10センチの穴が開いた。そこで2021年秋、クラウドファンディング(CF)で修理費用を確保して完全修復した。
さらに経蔵の周囲の杉の一部を伐採し、その木材を加工して新たに回廊を設ける環境も整備できた。
久利康暢(くり・こうちょう)住職の、CFで支えてくれた多くの人への感謝と、もっと高野山の魅力を知ってほしいという願いで実現した。文字通り「お経を収める蔵」のため、中に仏像が安置されているわけではないが、経蔵内部を拝観できる機会はめったにない。
経蔵の正面から金網越しに見ることができ、多くの宝物や書物、巻物などが収蔵されている様子がうかがえる。
特に注目されるのは、徳川幕府二代将軍・徳川秀忠から賜った香木、通称「羅國(らこく・原産地のシャム=現在のタイ)」の展示。高さ60センチを超える大きさの沈香(じんこう)が初公開されている。
◆世界遺産高野山 金剛三昧院
【公式サイト】
【公式Facebook】