故人とのお別れ。近年は儀式や習わしにとらわれない無宗教の葬儀が多くなり、位牌も戒名や法名でなく生前の名前で作るケースが増えてきているとか。
仏教離れとも言われる昨今の風潮に、「このままでは日本人が心の拠り所をなくしてしまう」と危惧する仏壇・仏具店「素心」(本店・兵庫県加古川市野口町)が、対応策として社内にメディア事業部を立ち上げ、新しい取り組みを始めた。
主な業務は、「心音(こころね)」と名付けた小冊子の編集・発行。法話のYouTube配信や手書き御朱印の配布、坐禅体験を通じた交流サロンの開催など、独自の啓蒙活動をコツコツと展開する地元寺院をこまめに取材した赤字覚悟のフリーペーパーだ。
「姫路仏壇」と呼ばれる地場産業をPRするため、仏壇づくりに必要な箔押しや漆塗りなどを手掛ける若手職人のインタビュー記事も載せている。3〜4カ月に一度のペースで出し続け、現在で通巻8号。同社ホームページで読むこともできる。
同社の浜田和光社長は「日本はそもそも世界のどの国よりも先祖を敬おうという気持ちが強い国柄。自分たちの祖父や祖母が手を合わせてきた対象が悪いものであるはずもない。仏様の教えに触れると心がほっこりするんだよということを、若い人たちに知ってもらいたくて」と狙いを話す。
ちょうど、今年は浄土真宗の宗祖・親鸞聖人が生誕850年。京都国立博物館の特別展「親鸞─生涯と名宝」(5月21日まで開催中)を取材した特別パンフレットも独自に5千冊作成した。すると、浄土真宗の本山、西本願寺から「参拝者に配布したい」との申し出があり、さらに各地の別院からも設置の依頼が次々と舞い込むなどして、あっという間に品切れになるほど喜ばれたという。
将来的には、日本の神話や昔話を子どもたちに広めるNPOの立ち上げも検討中。