神戸市をホームタウンとするサッカー・J1のヴィッセル神戸。「2023明治安田生命J1リーグ」では14試合を終え、暫定首位という快進撃を続けています(※2023年5月20日現在)。数々の苦難を乗り越えて今日に至るクラブの歴史をたどるとともに、現在の活動や今後の目標などについてクラブの広報担当・林哲也さんに話を聞きました。
1995年1月1日に正式始動したヴィッセル。初練習を予定していた1月17日未明、阪神・淡路大震災に見舞われます。練習場もままならないなかでも立ち上がったチームは、スチュアート・バクスター監督のもと、GK石末龍治氏、DF和田昌裕氏、FW永島昭浩氏という兵庫・神戸にゆかりのある選手たちを中心に結束。旧JFL(かつての日本フットボールリーグ)で初年度は6位に終わるも、2年目に2位に入り、悲願のJリーグ昇格を達成しました。
また、1996年に当時のデンマーク代表FWミカエル・ラウドルップ氏を招聘したのをはじめ、過去から現在に至るまで名選手も続々と港町のクラブでプレー。2001年には日本サッカー界のレジェンド・「カズ」ことFW三浦知良選手もヴィッセルの一員となりました。その年の10月には、2002 FIFAワールドカップの会場となる神戸ウイングスタジアム(現、ノエビアスタジアム神戸)が完成。新スタジアムのお披露目となった試合では3万813人の大観衆を集め、その一戦で記念すべきゴールを決めたのもカズ選手でした。
2003年シーズン終了後には、クラブがなくなるかもしれないという危機もあったヴィッセル。神戸出身の三木谷浩史氏(現、楽天グループ代表取締役会長兼社長最高執行役員)が立ち上げた株式会社クリムゾンフットボールクラブへ営業譲渡され、新生・ヴィッセルが誕生。クラブが生まれ変わった翌年の2005年からはエンブレムやクラブカラーも一新され、練習場やクラブハウス、アカデミー(育成組織)向けの寮(三木谷ハウス)も整備されるなど、改革も加速していきます。
現場に目を移すと、日本代表で活躍したDF三浦淳宏(現、三浦淳寛)氏やFW大久保嘉人氏らが活躍。また、2010年代からはFW小川慶治朗選手(現、横浜FC)らクラブの育成組織出身の選手の台頭も目立ち始めます。途中、2度のJ2降格も経験しましたが、ともに1年でのJ1復帰を果たし、2014年シーズンからは徐々にリーグ戦やカップ戦で結果を残すようになります。
運営会社がいまの楽天ヴィッセル神戸株式会社となった2017年には、元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ選手(現、グールニク・ザブジェ/ポーランド)がやってくると、2018年にはFCバルセロナからスペインの至宝、MFアンドレス・イニエスタ選手が電撃加入。さらに、翌年には元スペイン代表FWダビド・ビジャ氏やベルギー代表DFトーマス・フェルマーレン氏も迎え入れ、クラブは一気にスター軍団へ。
そのシーズンの締めくくりとなる第99回天皇杯では、新装された国立競技場で、クラブ初のタイトルを獲得。クリムゾンレッドのイレブンやサポーターが歓喜に酔いしれました。