■冬:100〜200程度の群れに縮小
そして冬になると、秋ほどの巨大な群れはあまり見かけなくなります。おそらく、あまりにも巨大な群れでいると、餌の確保などが難しいためでしょう。街なかに戻ってきて、100~200羽程度の群れで街中を動き回ります。だいたい行動する範囲が決まっていて、特定の木に集まったりします。おそらく、安全で暖かいからでしょう。寝るときも、だいたい決まった木で寝ることが多いです。
――季節によっては、そんなに大きな群れになるんですね! たくさん木があっても特定の1本の木だけに集中して群がるのには理由があるのでしょうか? また、その時に発している鳴き声には何か意味があるのでしょうか?
【三上教授】 先ほどお話ししたように季節によっては群れを作るので、自然と1本の木に集まることになります。特に秋冬は、集まって寝る方が安全で暖かいのでその傾向が強くなります。夕方にねぐらをとることもあるので、木に群がる大群を見かけるのは秋冬の夕方が多いのではないでしょうか?
なぜ特定の木に集まるのかについては、お気に入りの木があるかもしれませんね。何をしているのかも、じつはよくわかっていません。かなりいろいろな声を出しているので、何らかの情報交換をしているような気がしますが、それもまだ誰も知りません。
――こんなに身近な生き物なのに、意外とまだわかっていないことも多いんですね。年に複数回、子育てをすることも、先生のお話ではじめて知りました。
【三上教授】 スズメというのは、一年中いて、あまり季節感が無いように思えます(枕草子にもそういう記述があります)。でも、じっくり見てみると、群れているかどうかを含めていろいろ季節感を感じさせてくれる鳥です。そう思って見てみると、楽しいと思いますよ。
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いかがでしたか? 古くは枕草子の時代から、わたしたちの日常になじみのある生き物のはずが、意外と知られていない「スズメ」の生態。ちょうどこれからの時期だと、子スズメの群れを見ることができるのでしょうか。スズメの様子から季節の移り変わりを感じてみるのも、風流かもしれませんね。
(取材・文=中口のり子)