2023年4月、京都国立近代美術館(京都市左京区)は開館60周年を迎えた。1963年4月27日、国立近代美術館京都分館として開館し、1967年に同美術館として独立した。今年は、これまでの60年間の活動を検証する5つの展覧会を開催する。
その新しい一歩となる「Re:スタートライン」展は、開館当初から1970年まで毎年開催していた「現代美術の動向」展シリーズ(1963年は「現代絵画の動向」という展覧会名で開催)に出品された293組の作家の作品のうち66組の作品をその年ごとに展示する。
「動向」展は、東京の動向をいち早く紹介し、その1年間で活躍した京都周辺在住の中堅・若手作家を取り上げた。ギャラリーや画廊で作品を展示することはあっても美術館で展示する機会は少ない若手作家にとっては目標とする展覧会だったという。
1960年代は社会や人々の生活の変化を背景に、美術の世界でも概念や形式・素材が大きく変わっていった時代。抽象絵画、ネオ・ダダ、ポップ、キネティック、コンセプチュアル、ハプニング、もの派など、今日の「現代美術」を表現する言葉の多くも生み出されたといい、「美術史を語る上で重要な時代と言える。そんな60年代のアートシーンを体感できるような展示になっている」と牧口千夏・京都国立近代美術館主任研究員は話す。
「動向」展は、創設当初の1963年、64年展は、アンフォルメル、抽象表現主義の絵画が主流だった。一方で、東京を中心に高まりを見せていたネオ・ダダによる反芸術的傾向も紹介している。
その後65年、66年展頃はポップアートの影響を受けたような表現が増え、その後は光や音、動きを取り入れた作品が登場、69年、70年展になると、素材や物質を、あまり手を加えずそのままの形で提示する、いわゆる「もの派」的傾向が急増する。作家が美術館で作品を作り上げることもあり、“形が残らない作品”も多くあった。「作家と美術館が一緒に作り上げる作品もあった。そういうことができた時代だった」という。
「1960年代は日本の現代美術が動いた時代。その年その年の傾向と変化を感じてほしい」と同美術館の担当者は話す。