◆出張や営業など仕事の移動中に道で拾った場合
ーーもし営業や出張など業務中の移動の際に落とし物を見つけた場合、その権利は自分のものになるのですか? それとも勤務先ですか? どちらのものになるのでしょう。
【森本弁護士】拾った人が拾得者になります。拾った人ではなく施設などが拾得者になるのは、先ほどのような、施設の従業員などが施設内で拾った場合に限られます。
◆拾って届けたものが盗品だった場合
ーー拾って届けたものが店や人から盗まれた物だと発覚した場合、その拾得物の権利はどうなるのでしょうか?
【森本弁護士】遺失物とは、いわゆる落とし物や忘れ物であり、盗まれた物は遺失物にあたりません。そのため、拾ったとしても謝礼を貰う権利はありません。
◆拾ってしまった物による特殊な事例
ーー落とし物を見つけたが、扱いに困ってしまうようなものだった場合はどうすればいい?
【森本弁護士】例えば覚せい剤などの違法薬物を拾った場合も、当然のことですが拾得物を取得することはできません(遺失物法35条1項)。また、覚せい剤は所持しているだけで犯罪となりますので、拾ってしまうと余計なトラブルに巻き込まれる恐れがあります。発見しても触らずに、その場で通報するのが無難だと思います。
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落とし物を拾った場合には、届け出が義務となっています。もし義務を怠り落とし物をそのまま持ち帰ってしまった場合には刑法上の遺失物等横領罪が成立する可能性もありますので、必ず届けるようにしましょう。(取材・文=宮田智也)
◆森本圭典 かなえ法律事務所(神戸市) 共同代表弁護士 / 甲南大学 非常勤講師
2013年12月弁護士登録。地元兵庫県で地域に根ざした弁護士活動を行う。取扱分野は、相続、交通事故、破産、中小企業のトラブルなど。甲南学園を卒業した縁から、甲南大学で非常勤講師も務める。