◆回旋塔:高い支柱に円錐状に鎖と円形の輪が取りつけられた遊具
【丸山さん】 子どもたちは輪の部分にぶら下がって回転させて遊んでいました。回転が加速すると体がななめに浮くため、その感覚が楽しくて熱中した子も多かったようです。10人弱が一斉につかまってかなりのスピードで回すので、体重の2倍ぐらいの遠心力がかかり相当な握力がないと吹き飛ばされていました。手の皮がむけながらも、誰が最後まで残っていられるかを競い合って楽しんでいました。
◆懸垂シーソー:頭より高い位置に設置されたシーソーにぶら下がって遊ぶ遊具
【丸山さん】 両側に1人ずつぶら下がって地面を蹴った勢いで高く飛び上がる仕組みですが、体重差があると2~3メートルの高さにまで上がることもありました。これも高所から落下されたり、上に放り投げられたりして危険ということで最近だと撤去されることが増えています。
―――1970年代と現在では、遊具への考え方が大きく異なるのですね。
【丸山さん】 現在の「安全第一」という考えと比べ、当時は「ちょっと危ないほうが楽しい」「難易度が高い遊具で達成感を」という考え方が強く、親でさえ「子どものケガは元気に遊んでいる証拠」と捉え、むしろ“勲章”と考えられていました。実は、僕自身も小さいころに遊具から落下して腰を20針も縫うケガをしたことがあります(笑)。
また、当時の公園はあらゆる世代の子どもたちが一緒くたになって遊んでいて、年長者が小さな子に遊び方を教えるということが自然に起こっていました。一方、現在は公園で遊ぶ子も減ってきたことからそもそも遊び方が分からないという子が多くなり、公園内に遊び方の説明看板を設置するのが通例になっています。
遊具にもルールが設けられ、より安全に遊ぶことが求められています。たとえば、「逆走禁止」という標識が増えてきたすべり台。もともと、すべり台は「下り優先」なだけであって、すべってくる子がいなければ別に下から逆走してもいいんです。昔は“あえて”ルールを作らないことで、自由な発想を伸ばすという考え方もありました。こうした流れはしかたがないと思いつつも、個人的には少しさみしさも感じます……。
一方で、高齢者の公園利用が増えたことをうけて、最近はストレッチなどができるような健康増進を目的とした器具の需要が増えています。今後は子どもだけでなく、老若男女すべての方に向けての公園づくりが進んでいくと思います。
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かつては、毎日遊んだ懐かしの遊具たち。その多くが、老朽化や安全面をはじめとしたさまざまな理由からその姿を消そうとしています。昭和の公園の姿が失われていく一方で、今は障がいを持つ子どもたちや外国籍の子どもたちなど、みんなが一緒に遊べる「インクルーシブ公園」という新しい公園のスタイルが広まっているようで、懐かしの公園は今も進化を続けています。懐かしいあの時代に思いを馳せながら、思い出の公園に今一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
※ラジオ関西『Clip』2023年6月22日放送回より
(取材・文=藤田慶仁)