江戸時代に庶民の幸せと平和を願い、倹約を美徳とする地方の藩主の物語。神木隆之介が主演する、映画『大名倒産』が全国公開中です。
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越後の丹生山(にぶやま)藩に住む間垣小四郎。父親が獲って加工した塩引き鮭を、町へ出かけて売る鮭売りとしてささやかに暮らしています。ある日、自分の家につながる細い道に、侍たちが行列をつくってひざまずいているのを見て、驚きます。
「父上、こ、これは一体?」
父親は突然、小四郎に衝撃の事実を告げます。
「父ではない!」
小四郎は意味が分からず、聞き返します。
「え?」
父親は小四郎を見つめ、ゆっくりと言いました。
「実の名は、松平小四郎」
なんと小四郎はこの家の息子ではなく、松平家の四男で徳川家康の血を引く大名の跡継ぎだというのです。
「はぁーあ?」
丹生山藩を治めていた先代の藩主が隠居することになり、跡を継いだ長男はその日のうちに亡くなりました。次男はうつけ者、三男は病弱でどちらも頼りにならず、四男の小四郎が庶民の身分から若き殿様として城へ迎えられることになったのでした。
急に藩主となった小四郎。城での生活を始めた矢先、実は丹生山藩は25万両、現在の価値にして100億円の借金を抱える貧乏藩であることが分かります。小四郎は幼なじみのさよや家臣の平八郎らとともに、藩の運営にかかる費用や財産をチェックし、節約プロジェクトをスタートします。
蔵にしまってある槍や鎧は「武器があるから戦になるのだ」と売り払いました。また「こんなに広いお屋敷はいらない」と一部を売りに出し、次男・三男が暮らす離れで小四郎も寝起きします。さらに参勤交代は宿代がかかる、とみんなで野宿することに。藩の肥溜めにある排泄物は肥料として活用するよう農民に販売します。
殿様はいいものを食べているから養分が多い、と小四郎のものは高い値が付きました。