2年前に明石に住むようになった女性は「街に出たら、みなさんが声を掛けてくれる。核家族化された中での子育ては孤独になりがちだが、ひとりじゃないんだと思えるのが、明石の良さ」と話した。
現在育休中で、いずれは職場へ復帰して子どもを保育園に入れたいと希望しているものの、空きがない状況。ミーティングで感じたのは、「単に保育園を増やしてほしいという要望を投げかけるのではなく、育児家庭への助成金を充実させることで、パートなどで収入を確保する選択肢が省けるのでは」という発想の転換だったという。
1歳の息子の育児に励む女性は、「おむつの無料定期便というサービスがどれだけ金銭面で助かったか、計り知れない」と話す。大変な育児生活で外出もままならない中、おむつを届けてもらった時の嬉しさや、支援員が育児の悩みを聞いてくれたことが嬉しかった。そして、感謝の気持ちでいっぱいになった。
ミーティングでは「“育児”は乳幼児に向けたものだが、”子育て”はさきざきの長い課題だということがよくわかった。実家も明石に近く、夫も育児に協力的だが、地域での見守りも必要だと思う。明石はほかの地域よりも街全体で子どもを育てようという雰囲気がある。子育て世代の親が、孤独にならないような街づくりは、行政サービスだけではなく、”人”によるところが大きい」と評価する。
ミーティングでは具体的に、▼障がいを持つ子の親が亡くなった後のケアをどうするのか▼ガイドヘルパーの講習の開催▼(計画中の)明石市役所の建て替えに障がい者の声を生かしてほしい▼市民みんなが(明石市の名所の)海を楽しめるように、海岸の砂利道でも移動できる車いすの購入を、などの意見が出た、。明石市ではこれらを集約後、市役所内の各部署で検討に入るという。
丸谷市長は「若いお母さんたちが、育児に対する意見を持ち、今抱えている課題を話してくれたことがとてもありがたい。こうした(主に20~30代の)世代にパワーがあるのが明石市の財産だと思う。私自身も30年前に神戸から明石へ転居して子育てをしたが、環境が大きく変わり、さまざまなサポートが届くようになった。行政へのお願いではなく、みんなと一緒に作り上げていくという意識が芽生えていることが、ひしひしと伝わってきた」と手ごたえを感じていた。
そして、「この日だけで終わらせずに、この場を共有した人と人との“つながり”を作ってほしい」と話し、子どもたちだけでなく、子育て世代の親も取り残さないタウンミーティングのあり方を示した。
丸谷市長は、社会的問題を解決するための「ソーシャルイノベーション」を専門分野に、大学院で博士号を取得したこともあり、一方通行ではない、対話を重視した合意形成を図るため、タウンミーティングの重要性を訴えていた。5月1日に着任、同月15日には「市民とつながる課」を市役所内に設置している。