関西の夏祭りのトップを切って「愛染祭(あいぜんまつり)」が30日、四天王寺支院・愛染堂勝鬘院(あいぜんどうしょうまんいん・大阪市天王寺区)で始まった。 7月2日まで。同院は聖徳太子が593年(飛鳥時代・推古天皇元年)に建立し、「愛染祭」は日本最古の夏祭りとされる。 2014年には大阪市指定無形民俗文化財となった。
江戸時代に商売繁盛や縁結びを祈願し、芸妓が宝恵駕籠に乗り参詣した「宝恵駕籠行列」は、昭和初期あたりまで北新地や今里新地の芸者がパレードの主役を務めたこともあったという。現代では浴衣姿の「愛染娘」が乗り、谷町筋を「愛染さんじゃ、ほえかご、ぺっぴんさんじゃ、ほえかご、商売繁盛、ほえかご」と、掛け声をかけるパレードに姿を変えた。
宝恵駕籠の名前の由来は、江戸時代の年号「宝永(ほうえい)」との説もある。
夏祭りといえば露店が立ち並び、夜には人々が涼を求めて浴衣姿で訪れる風情があった。しかし、愛染祭は時を経て、さまざまな問題が浮上した。約10年前からごみの投棄など客の迷惑行為に対して近隣住民から苦情が相次いだ。暴走族が集まり騒音被害も深刻になり、大阪府警から改善策を求められる事態に。
2018年から祭りの規模を縮小し、200件あった露店の出店は見送られた。さらに 恒例行事の「宝恵駕籠行列」も縮小、 駕籠に乗り、祭りに華を添える愛染娘の募集も中止した。 愛染堂勝鬘院の山岡武明住職は 「境内すら訪れることなく、ただ若者たちがたむろして暴れるだけ。 怖いだけの祭りと化してしまった」と苦渋の決断をした背景を語っていた。
そして2020年、新型コロナウイルス感染拡大で、全面中止も辞さない状況に追い込まれたが、オンライン配信やスケジュールの簡素化で新たな祭りのあり方を模索した。例年、一年の折り返しにあたる6月30日に始まる「愛染祭」が、半年の間に身に溜まった穢れを落とし、残り半年の息災を祈願する「夏越の祓え」と重なることから、祈りの原点に立ち返るという方針に転換した。
昨年(2022年)には、軍事侵攻の収束が見えなない中、ウクライナからの留学生を宝恵駕籠行列に招待した。