世界文化遺産・平等院(京都府宇治市)で、「平等院蓮(びょうどういんばす)」が見頃を迎えた。
1999(平成11)年に行われた、国宝・鳳凰堂を囲む阿字池(あじいけ)の発掘調査で、江戸時代後期(約200年前)の地層から出土した1粒の蓮の種を発芽させたもの。
平等院独自の品種で「平等院蓮」と名付けられた。2001(平成13)年以降、毎年花を咲かせている。
平等院蓮は、つぼみの状態では先端が紅色だが、開花すると純白に変わる。
鳳凰堂の本尊阿弥陀如来坐像の背後に描かれている仏後壁(国宝・平安時代作)にも、平等院蓮を思わせる、先端が紅を帯びた蓮の花びらが描かれている。
平等院鳳凰堂は、平安時代に摂政・関白を務めた藤原頼通(992~1074)が1053(天喜元)年、宇治の地に建立した。神居文彰(かみい・もんしょう)住職は「1000年続く歴史的な建造物と空間が、自然と共生したからこそ、(1粒の蓮の種が見つかり)蓮の花を開花させた。平等院が次の世代まで残していかねばならない大切な命だ」と話した。
20年来、平等院蓮の手入れをしている寺嵜将士(てらさき・まさし)さんは「今年は約10日遅れての開花となったが、蓮にとって大切なのは、気温ではなく水温。春先は例年より気温が高く、さまざまな花の開花が早まったが、5月以降は少し落ち着き、蓮の開花に適した水温となるのに時間がかかったのでは」と分析する。
蓮は泥水の中から美しい花を咲かせる。『蓮は泥より出でて、泥に染まらず』と言われ、仏の慈悲や、清浄さの象徴とされている。