ビジネスマンには仕事着、また、多くの人がここぞという時に勝負服として着用するスーツ。フルオーダーから既製服までさまざまある中、関西を拠点に展開する老舗オーダースーツ専門店のキャンペーンがユニークだと評判を呼んでいます。「不採用割」「めおとスーツ」「メダル割」などネーミングも独特ですが、じつは、あえて“ふざけ”続けているのだそう。理由や背景、信条について、「ツキムラ」4代目社長の月村太朗さんこと岸祐亮さんに聞きました。
オーダースーツ専門店ツキムラは、1925年、昭和の始まりと共に「月村洋服店」として奈良県で創業。今年で創業98年を迎えます。
「月村三五朗」を名乗った3代目の社長はアイデアマンだったそうで、歩道に店までの足跡を描いて客を誘導したり、ラジカセで宣伝文句を流してみたりと、当時としては画期的なPR手法に取り組んだといいます。
3代目の姿勢は社風として受け継がれました。
2002年、オーダースーツ「3着5万円」という破格のセット割引が生まれたのも、3代目社長による斬新なアイデアがきっかけだったとのこと。「納豆やプリンの“3個パック”のように、オーダースーツも3着セットで販売すればもっと身近になるのでは?」との提案だったそうです。
当時オーダースーツといえば、一着でも5万円以上が当たり前でした。岸さんは、現在もそのセット割引を続ける背景について、「弊社のスーツも、十分引けを取らないクオリティ。有名高級ブランドの生地を取りそろえ、独自の丁寧な縫製と仕立てにもこだわっています。たくさんの注文を受け続けるからこそ成り立つ価格なんです」と語りました。ちなみに、岸さんの「月村太朗」との名も、3代目から付けてもらったものだそうです。
その後、岸さん自身もさまざまな割引を考案してきました。たとえば、就職試験の不採用通知の枚数ごとに10%の割引を行う「不採用割」や、上司のスーツオーダーで部下のスーツが無料になる「スーツおごりサービス」など、内容・割引率ともにかなり思い切ったキャンペーンを続々と企画しています。