江戸時代を代表する芸術・浮世絵。当時の社会風俗を描いたものが多く、一目見ただけで物事を伝える「媒体」の役割を果たしていた。その浮世絵から当時のブームを探り、江戸っ子たちのライフスタイルをひも解く特別展「花のお江戸ライフ―浮世絵にみる江戸っ子スタイル―」が、神戸ファッション美術館(神戸市東灘区)で開催されている。2023年8月27日(日)まで。
浮世絵は17世紀後半に始まり、明治期にかけて、広く庶民に支持された。初期は役者絵が多かったが、19世紀になると旅や食など庶民の関心を引くようなものも描かれるようになった。江戸時代を代表する芸術と言える。
浮世絵展と言うと、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重など、作家ごとに作品を集めた展示が多いが、本展は、ペットやメークアップ、ガーデニングなど江戸っ子が夢中になったブームや趣味、娯楽といった切り口で作品およそ160点を紹介する。
江戸時代、ペットとして人気があったのは猫、犬、金魚だった。当時は養蚕業が盛んになるにつれ、蚕を食べるネズミが増えたため、人々は猫を飼い始めた。浮世絵にも多く登場する。浮世絵は、見たものをそのまま描くのではなく、作者の想像が入っていたり誇張して描かれているものも多い。二代歌川国貞の「奥御殿 泉水遊覧の図」に描かれている金魚は「人面魚」。当時の役者の顔が描かれているという。また、金魚玉や全面ガラスの水槽は、当時の技術では難しかったとされるが、作品にはしっかりと描かれている。
江戸時代に五街道が整備されると、参勤交代だけでなく庶民の往来も多くなった。旅行ブームを背景に生まれた風景画は、今でいう絵葉書のようなもので、富士山や城が描かれているもの多い。