旅のお供とされる保存食のひとつ染飯(そめいい)。現在の神奈川県藤枝市付近では名物だったという。漢方薬のひとつであるクチナシでもち米を染め、小判状にして乾燥させたもので、これを売る茶店を描いた作品とともに、再現した食品サンプルも展示する。
また当時の人気の役者や遊女を描いたものもある。これらは現代でいう「ブロマイド」。ファッションリーダーやインフルエンサーのような存在だったと想像できる。
季節の行事を描いたものの中に端午の節句がある。柏餅や鎧兜の他に、少年のファッションアイテム・菖蒲刀が描かれている。木刀に色を塗ったり色紙を貼ったりし、柄に菖蒲の葉を巻いたものを、少年たちは腰に挟んでいた。当時の暮らしの様子を垣間見ることができる。
神戸ファッション美術館の担当者は「これらの浮世絵は、絵葉書やブロマイドの感覚で広まっており、大量生産され、そば1杯分くらいの値段だった。だから残っていないものも多く貴重。テーマごとに展示することで、普段あまり浮世絵に接する機会がない人も気軽に楽しんでほしい」と話す。
一方、同館では、戦後から1960年代までを中心に、ファッションの主導権が若い世代に移り変わる時代のドレスの数々を紹介するドレスコレクション展「おしゃれなデイ・ドレス」(身も心も踊った! 1940~60年代のドレスたち)も同時開催する。
◆特別展「花のお江戸ライフ―浮世絵にみる江戸っ子スタイル―」
会期 2023年7月8日(土)~8月27日(日)
会場 神戸ファッション美術館(神戸市東灘区向洋町中2-9-1)
休館日 月曜日
【神戸ファッション美術館 公式HP】