夏のレジャーといえば海やプールですが、そのいいところ取りをしたような施設が“海水プール”です。プールなのに海水を使用し、海の気分を味わうことができるという施設ですが、関西や中部に住む人には三重県桑名市の『ナガシマスパーランド』内にある「ジャンボ海水プール」が馴染み深いのではないでしょうか?
とはいえ、プールにはプールの良さがあると考える筆者は、なぜわざわざプールになぜ海水を持ち込むのか疑問に感じていました。海水プールを始めた経緯や、どのように海水を持ち込んでいるのかなど調べてみました。
同プールを運営する長島観光開発の広報・倉澤さんによると、ナガシマスパーランドが三重県桑名市にて開業したのが1966年3月、同年7月にシーサイドプールが新設されたとのこと。シーサイドプールを海水プールに改修したのが、その10年後となる1976年であり、その2年後には「ジャンボ海水プール」としてオープンしました。そこから様々な改修や拡張を重ねながら、世界最大級の海水プールとして現在に至るとのことです。ではなぜ、通常は真水であるプールに海水を導入したのでしょうか?
倉澤さんは「1960〜1970年代、高度経済成長期に手軽に安心して清潔な環境で海水浴気分を満喫して欲しいという思いがあった」と回答。「今でも安全に安心して清潔に海水浴気分を満喫できる海水プールとして運営を続けています。海水が苦手な方もおられますので、様々なニーズに応じて真水を使ったプールも導入しています」とのこと。
海水をどのように利用しているかについて聞くと「伊勢湾から取り込んだ海水をろ過・浄化・殺菌し利用することで安全清潔な水環境確保と、豊富な水資源活用を行っています」とのこと。ナガシマスパーランドのある場所は、一級河川である木曽川と揖斐川の河口にほど近く堤防の向こうには海が広がります。こうした海水を利用しやすい立地も海水プール導入のきっかけとなったそう。また需要のある理由として、隣接する愛知県尾張地区(名古屋市などの都市部を擁するエリア)は近くに海水浴場が無いこと、さらに観光を兼ねた他府県からの客も多く「身近で手軽に海水浴を楽しめる場所として認識されているのでは」と倉澤さん。
海水プールの調査を進めていく中で、石川県の輪島市にほぼ天然に近い「鴨ヶ浦塩水プール」というとても珍しい海水プールがあることがわかりました。輪島市の鴨ヶ浦海岸にあり、そのまま岩礁をくり抜いたようなプールで国の登録有形文化財にも登録されています。
縦25メートル・横13メートルの大きさで、管理を行う輪島市観光課によると「大人でも足がつかないくらい深く、本格的に泳ぐことができるプール」とのこと。プールの南北には取排水口が設けられ海水が自然に流出入する仕組みとなっており魚も普通に泳いでいます。料金は無料で誰でも自由に泳ぐことができるため、この時期は特に利用客で賑わうそうです。