兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)では8月27日(日)まで、特別展「デミタスカップの愉しみ」が開かれている。分かりやすい解説で好評のシリーズ「リモート・ミュージアム・トーク」の今回は、同館の岡田享子学芸員が担当。3回にわたって、同展の内容について教えてもらう。第2回は「多彩な造形と装飾」。
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兵庫陶芸美術館では、2023年8月27日(日)まで、特別展「デミタスカップの愉しみ」を開催しています。本展は、デミタスカップ収集家、村上和美氏の2000点を超える所蔵品の中から、マイセン、ウェッジウッド、ミントン、セーヴルなど、欧州の名窯が19~20世紀に生み出した作品を中心に、珠玉の約380点を紹介します。
最初にお目に掛けるのは、ハンドルがカップの両側に付けられた珍しいデミタスです。この蓋付きカップ&ソーサーは、蓋とカップ、カップとソーサーの模様が連続するように描かれ、蓋、カップ、ソーサーをセッティングして、初めてデザインの美しさがわかります。アメリカのティファニーが発注し、イギリスのコープランドで製作されました。
次もユニークなデザイン。テニスセットは、テニスやパーティーの場で、飲み物と軽食をひとつの器で持ち運べるように作られたものです。ソーサーは、カップの受け皿と、スナック皿の両方の機能を兼ね備えているため、カップを乗せる位置はくぼませて安定感を持たせ、一部が食事用に平たく大きく作られています。
小さな楽園を思わせる優品も。丸みを帯びた蓋付きのカップ&ソーサーには、白い磁器の花が器面いっぱいに貼り付けられています。白いガマズミの花が基となった、「スノーボール」と呼ばれる華やかな装飾は、マイセンの定番の技法として知られています。
最後はきらびやかな輝きを放つ作品です。赤、黄、白のバラが細やかに絵付けされたカップ&ソーサーには、金彩がふんだんにあしらわれ、華やかさがひときわ際立っています。バラは、カップの内側全体にもあらわされ、コーヒーを飲み終わった後にも、カップの絵柄を楽しめる趣向が凝らされています。
(兵庫陶芸美術館 学芸員・岡田享子)