日本で初めて“流通”を学問・研究の対象としたユニークな大学が、今年開学35周年を迎えた。兵庫県神戸市にある流通科学大学だ。 総合スーパー「ダイエー」の創業者で、“流通業界の革命児”とも呼ばれた中内功氏(功の字は、力ではなく刀)が創設。門や塀がなく、社会に開かれた大学としても知られる。
同大学では、企業の抱える問題を解決するアイデアを出し合う「I-1グランプリ」のほか、自治体と連携したプログラムなど実学重視の取り組みを多数手がける。学長の藤井啓吾さんに、大学が目指すものや学生に期待することなどを聞いた。
流通科学大学では、実学を重んじる姿勢から、学生たちが在学中に大学外で活躍の場を見つけられるよう「社会共創プログラム」を設置している。学生自身が考え調査し、仲間と協力しながら、マーケティングの知識を生かして企業・地域・自治体が抱える課題解決に取り組んでいくもの。学内に設けた社会連携推進委員会を中心として、常時30ほどのプログラムが並行して動いている状況だという。
自治体と連携したプログラムも展開。これまで、三木市や神戸市、稲美町と最近では猪名川町や小野市(いずれも兵庫県)と連携協定を結び、協定を軸にした活動を始めている。
たとえば過去には、ホテル・ブライダルコースで学んだ学生の力を結集。本物のカップルの結婚式をプロデュースし、流通科学大学キャンパスを結婚式場とした「キャンパスウエディング」が行われた。
小野市でも、こうした学生プロデュースのウエディングを考えているという。また猪名川町では、名産品の開発として学生がワイン作りに関わっている。
企業との連携では、毎年「神戸学生イノベーターズ・グランプリ(通称:I-1グランプリ)」を開催している。特定の企業から与えられたお題に対し、学生が解決策を提案するもの。他大学や高校にも参加を呼び掛け、提携先の企業の代表者と藤井学長による最終審査で最優秀(グランプリ)を決める。
2022年に実施した前回は、六甲山観光株式会社の協力を得て「コロナ禍により大打撃を受けた六甲山観光の収益改善」というテーマに対し、学生が提案を行った。今回はアシックス商事と連携。会社が抱える課題について事前に説明を受け、提案を行っていくとのこと。