【林さん】 実は、社内に実物がひとつもなく、手書きの図面があるだけだったんです。なんとか当時のきょろちゃんを所有していた方々から複数台お借りすることができたため、それら実物と当時開発に携わっていた社員のかすかな記憶を頼りに「復刻版きょろちゃん」づくりが始まりました。
お借りした実物を3Dスキャナーで読み取って再現しようとしたのですが、顔の角度やふくらみが微妙に異なるだけでまったく違う表情に変わってしまうんです。コンマ数ミリの修正を何度も何度も行い、ようやく当時のかわいらしい表情を再現することができました。
デザインだけでなくかき氷の質感や削り心地も、最新の技術を応用せずにできるだけ当時のままを再現した、という点もこだわりポイントのひとつです。
―――反響は?
【林さん】 反響はすさまじいものでした。2016年3月に販売したのですが、夏を迎える前にあっという間に完売してしまいました。2017年、2018年も同様に販売したのですが毎年完売で、きょろちゃんの人気ぶりには大変驚かされました。
実は、きょろちゃんの人気は日本だけにとどまらず、同時期にニューヨーク進出もしているんです。「日本の伝統を感じるかわいらしいデザイン」が評価され、モダンアートで名高いニューヨーク近代美術館(通称:MoMA)さんからの直接のお声がけで同館のショップに置いていただきました。
―――今後も復活はあるのでしょうか?
【林さん】 3年前にはきょろちゃんがカプセルトイになったり、暑中見舞いのはがきのデザインになったりと、さまざまな形で皆様の手に取っていただいております。現段階ではまだ具体的な復活の予定はありませんが、なんらかの形でまたかわいがっていただける機会を作れたらな、と思っております。
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かつて、一世を風靡したかき氷器「きょろちゃん」。あのなんとも愛らしいデザインは日本にとどまらず、世界からも認められていました。もしかしたら皆さんの実家の押し入れにも、“世界のきょろちゃん”が眠っているかもしれません。
※ラジオ関西『Clip』2023年8月10日放送回より
(取材・文=藤田慶仁)