女子サッカーの世界一を決める「FIFA女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド2023」で、2011年ドイツ大会以来の優勝を目指した日本女子代表「なでしこジャパン」。準々決勝のスウェーデン女子代表戦では終盤に猛攻を仕掛けるも、1-2と惜敗し、ベスト8で大会を去ることになりました。この一戦を、元なでしこジャパンDF川上直子氏が振り返るとともに、今後への課題などをラジオ番組で語りました。
グループステージを3連勝し、ラウンド16でもノルウェー女子代表に2-1と勝利。今大会では調子のよさが目立ったなでしこジャパンでしたが、11日のスウェーデン戦では前半にセットプレー絡みとPKで2点を奪われ、後手に回ってしまいます。後半、反撃を仕掛けたなでしこは、PKや直接フリーキックのチャンスでクロスバーに阻まれるなど惜しい場面が続きましたが、終盤の87分、途中出場のMF林穂之香選手のゴールで1点差に詰め寄ります。しかし、10分のアディショナルタイムでもあと1点が遠く、なでしこの戦いはベスト8で幕を閉じました。
「勝利を伝えたかったのですが、残念でした。でも、なでしこジャパンの選手の皆さん、スタッフの皆さん、本当におつかれさまでした。楽しませてもらいましたし、次に期待の持てる、ワクワクするチームだったなと思います」と、14日放送のラジオ関西『カンピオーネ!レオネッサ!!』番組冒頭で、川上氏はチームをねぎらいました。
そのうえで、川上氏はスウェーデン戦について、相手の出足の鋭さが前半のチームが後手に回った要因だとして、次のようにコメントしています。
「試合が始まった瞬間から、スウェーデンの勢いがすごかった。競り合いとかでも身体をぶつけまくってくるし、ファウルになってでも(取りに)行ってやるぞというプレーなど、スウェーデンの選手の気迫に、日本はちょっとチーム全体で下がってしまった。(日本は)『おっ、来られている』という焦りがあったように思えた。攻め込まれて、自分たちが奪ったボールを、ただのクリアだけになってしまい、そこからつないでいけなかった。大きくクリアするが、それが相手にわたり、もう1回攻められるという、それの連続だった。選手のみんなも、もう1回冷静に今、ビデオなどで見たら、『ここ、クリアじゃなくて、つなげたよね』というシーンがたくさんあったと思う。でも、大きく蹴ってしまっていた……。その(日本の)焦りを誘ったスウェーデンの圧がすごかった。チームとして、圧に負けて、ちょっと後ろに下がってしまったかな。もうちょっとコンパクトに、もう少しでもラインを高く保っていければよかったのだけど、スピードもあるし、高さもあるということで、たぶん感覚以上に、ちょっと後ろに重心がいっちゃったのかなと思う」(川上氏)
なでしこのスウェーデン戦・前半のシュートはゼロ。今大会で冴えていたカウンターも出せない苦しい状況でしたが、川上氏は「70分くらいからスウェーデンの足が止まりだして、日本もボールが回るようになった。あと20分あるから行けると思ったし、アディショナルタイムが10分と出たとき、これは逆転できると思った」と言います。そして、1点を返したときには、「まだ時間があるから、ここから追い付いて、延長・PKに行って(勝つ)というのが、なでしこが優勝までいくパターンなのかなと思った。2011年もこのように押されて押されてという苦しい試合もあったが、追い付いて、延長やPKを制して粘り強く勝ち抜いたというのがあったから、これはいけるんじゃないかと思った」。しかし、スウェーデンの壁は厚く、東京五輪のリベンジを果たすことはできませんでした。
「ベスト8から上に行くには、このスウェーデン戦みたいな試合をものにしないといけない。そうなると数少ないチャンスでも決め切れる決定力(が必要)。シュートの精度を上げていかないといけない」と、川上氏。今回のスウェーデンのような守備を崩す切り札の1人として、「メンバーに入っていない選手の名を出すのはあれだけど……」と配慮したうえで、「ここで『ぶっちー』がいたらなと思った」と、代表経験が豊富な岩渕真奈選手の名前を挙げました。その理由を次のように説明します。
「岩渕選手は重心が低くて細かいところを行くタイプのドリブラー。今回のメンバーにいない感じ。こういう選手が相手の足が疲れているときにドリブルでいくと、ファウルがもらえる。どんどんペナルティーエリアの中に仕掛けていける。『あそこにいたらなぁ……』って、メンバーに入っていない選手ですが、ちょっと思ってしまった」(川上氏)
そして、今回の内容を踏まえて、なでしこが今後、2011年大会のように頂点に立つには、世界で戦えるセンターバックの育成が重要だと、川上氏は述べていました。
「ここから上に行くには、高さがある、速さがある、強さがあるというチームに対して戦うとき、DFの3人の強さがもっと必要かなと。(スウェーデン戦は)熊谷(紗希)選手でもなかなか1対1で競り勝てるというシーンがなかった。そこが競り勝てないことには、ボランチの選手だったりがちょっとカバーに入るので、(ラインが)ちょっと後ろに下がってしまう。海外の選手相手でも『1対1で全然奪えるよ』という強さ、DF力のある選手を、日本はもっと育てていかないといけないなと思った」(川上氏)
そのためにも、今後は国内プロリーグの「WEリーグ」での切磋琢磨が必要だということも、川上氏は話していました。
WEリーグは2023-24シーズンが秋からスタートしますが、それに先立って8月26日(土)から「WEリーグカップ」が開幕します。新たにWEリーグに加わったセレッソ大阪ヤンマーレディースを含めた12チームが、2グループに分かれて1回戦総当たりのリーグ戦を行い、各グループ上位1チームがファイナルに進出。10月14日(土)に神奈川県川崎市の等々力陸上競技場で決勝戦が行われます。