“ワクワクロックンロールバンド”をキャッチコピーとして掲げるワタナベフラワーが、7月30日、配信シングル『泣きなさんな/100年』をリリースした。そこで、同バンドのボーカル・クマガイタツロウのインタビューを2回にわたって届ける。第2回は、最近の音楽業界とワタナベフラワーが譲れないモノ、今後の展望などを聞く。
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■近年の音楽産業に思うこと
最近、色々なアーティストやバンドにインタビューする機会が多いと言うクマガイ。近年の音楽産業には憂いを抱く。
「たとえば、今の音楽産業で、TikTokで何万回まわったとしても続かないですよ。レコード会社としては“宝くじ”だから、ショットで音源を出す。『(外れて当然)当たったらいい』くらいの感覚で。でもそこで売れるアーティストの数は微々たるもの。レコード会社も、今は(若い才能を)育てる体力がないのかなぁと」(クマガイ)
その上で「(バンドとしての)世界が変わった、集客が伸びた……そんな話は最近聞かない」、自身も(産業音楽)のシーンにいたこともあって、嫌気がさしたと言うか、ビジネスシーンの音楽の才能は自分には無いと考えたのだという。
東京の事務所にいた頃は、1か月で15曲書くくらい「頑張った時代もある」と振り返るクマガイ。しかし「今はそういうことができなくなったし、やりたくない」と明言する。現在の音楽産業に対して疑問を感じる中で、「1曲をもっと大事にする、(世の中に)逆行することを考えたんですよ」。それが『泣きなさんな』だった。
■時代のウネリを生む曲を
目まぐるしく展開する音楽産業。日本の芸能界で、そのシステムは既に確立している。
大きな目標を持ち、1年をかけてこの曲を大事に。そのために何をするか? クマガイは、「“時代のウネリを生んだ曲”って何だろうと考えた」そう。そこで思い至った。「時代を動かした音楽を送り出したのは、ピコ太郎」だと。
2016年の出来事だった。世界的人気を誇り、SNSで8800万人のフォロワーをもつビッグアーティスト、ジャスティン・ビーバーが動画をシェアしたことで、ピコ太郎の『ペンパイナッポーアッポーペン』が世界的なウネリを生んだ。
「ジャスティン・ビーバーから電話かかってきたら売れるじゃないですか!? 僕ら、ジャスティンから電話は掛かってこないですよ。でも、それくらい、世界がひっくり返るくらいのことをしないと、時代がウネるのを僕たちは見られない。自分の本当の夢に向かうということは、妥協せずに、時代がウネる曲を作ること。それを体感したい」(クマガイ)
自身の信念を実際のものとするためにすべきことを模索していた頃に出会ったのが『天使にラブソングを…3』制作の話だった。
挿入歌プロジェクトが立ち上がった。クマガイは言う。「そういった状況を作るのはトップ。トップダウンじゃないですか! トップから狙う!!」