もしあなたの母親が新しい恋をしているとしたらどうしますか? 母と息子の関係や父親と娘の衝突といった家族の人間模様をていねいに描く、映画『こんにちは、母さん』 が9月1日(金)、全国公開されます。
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「こんにちはー、母さん」
東京のマンションで暮らす神崎昭夫は、久しぶりに東京スカイツリーの近くにある実家を訪れ、母親に声をかけました。昭夫は、学生時代からの親友で勤務先が同じ木部から屋形船で同窓会をしたいと相談され、母親のつてを頼ることになったのです。
実家は下町・向島。昭夫の父親は足袋職人でした。母親の福江は、父が亡くなったあとも販売店として足袋屋を続けています。福江はイキイキと暮らしていました。
「ひなげしの会」という市民ボランティアグループの活動で、店に事務局を置いており、グループのメンバーがしょっちゅう訪ねてきます。忙しそうにしている母親を見て、昭夫は自分の実家なのに居づらさを感じて一旦帰宅します。
昭夫のマンションは散らかっていました。昭夫は半年前から妻と別居しています。娘は妻のところへ行きました。昭夫は夕食としてデリバリーサービスで酸辣湯麺をひとり分注文し、すすりました。
昭夫は大企業に勤めるサラリーマン。人事部長です。会社の業績を立て直すためのリストラ策を担当させられて、日々神経をすり減らしていました。「誰をリストラするか?」「本人へいつどのように伝えるか?」それを昭夫の責任で進めなければなりません。同期で親友の木部が希望退職の対象となっていました。
再び実家を訪れた昭夫。近所でせんべい屋を続ける幼なじみからもらったせんべいを食べ、思わず涙をこぼします。
「せんべいは人間を慰めるためにあるんだなぁ。腹の足しというか心の足し。俺もこういう仕事に就けばよかったなぁ。こういう仕事は裏切らないから……」
こうした中、大学生の娘・舞が妻に反発して住まいを飛び出したことが分かります。舞は福江を頼って、昭夫の実家に寝泊まりしていました。舞の様子を確認しようと、昭夫はまた実家へ行きます。舞が昭夫に言いました。
「ここにいる方がわたし落ち着くの。おばあちゃんは好きなんだって、牧師さんが。愛してるの。すごいでしょ! もしかして結婚するかも知れない、どうするパパ!」