1か月以上におよぶ夏休みを経て、8月の後半から2学期がスタートしている小学校、中学校、高校も多いですが、季節や学期の変わり目に起こり得るのが、環境や周囲になじめず「学校に行きたくない」という子どもたちの不登校の問題。不登校経験者やその親が、ラジオ番組で不登校の実情や経験談を語りました。
現在20歳の浅川雄多さんは、アーティスティックスイミングの選手として活躍中で、今年5月には日本選手権で新たに設けられた男女で行う混合デュエットにも出場した、注目のアスリート。そんな浅川さんですが、「小学校6年生のときに周りの人たちとコミュニケーションがうまく取れなくて、そこで不登校を経験した」と明かします。
浅川さんの母親は、子どもの不登校の理由について、「いろいろ考えられるものもあったが、息子が感じやすいところ、担任の先生との相性など、総体的な理由があって行けなくなったのではないか」とみていたそう。
卒業まであと3か月ということもあり、最初は公立の小学校への復帰を模索しつつも、母親は「息子の気持ちを考えて」、当初は自宅で過ごすことを選択。家では手伝いをするなど、浅川さんも穏やかに過ごしていたようですが、あるとき「自分も学校に行きたい! 友だちと遊びたい!」と浅川さんが泣いて訴えたことを契機に、残り3か月でも子どもにあうところをと探した結果、「通える範囲にあった」、初等部から高等部までを持つ通信制高校技能連携校(フリースクール)の門を叩くことになったそうです。
これまでの公立校での友人との付き合いも悪くないという思いも持っていた浅川さんでしたが、実際に通ったフリースクールの環境があっていたと言います。母親も、「送迎をしていたが、息子の表情がいきいきと明るくなった。帰りの車の中でその日にあった出来事を話してくれた。私も不安がなくなった。外の世界に出て行ってくれる安心感があった。息子が明るく楽しそうに学校で学んでいることがとてもうれしかった」と、当時の様子を述べていました。
一方、「小さい頃から集団行動が苦手で、幼稚園や小学校にもあまり行けず、特に小学校では学校の雰囲気や先生の振る舞いもあって」不登校になったというのは、成冨朱里さん。小学4年生のときに環境を変えて、浅川さんと同じフリースクールに通い出してからは、初めこそ「ガチガチに緊張」するも、時間を経て、ダンスの授業などで周囲をリードするなど、活発な一面も出てきたよう。「自分で何かを表現したり人前に立って何かをしても(やみくもに)否定されない」というフリースクールの雰囲気が彼女自身を変えたという話をしていました。
新学期を迎えて、重い気持ちを抱えている子どもに対して、先輩たちは次のようにメッセージを送ります。
「私自身も長期休みのあとはすごくおっくうになっていたので、『学校は無理して行かなくても大丈夫』だと伝えたい。学校だけがすべてではないから、たとえ行けなくても大丈夫だし、ほかに自分の居場所を見つけられたらいい」(成冨さん)
「夏休み期間中、自分と向き合う時間が多いぶん、夏休みが終わってしまうから準備をしなきゃというプレッシャーもあると思うが、それをあえて乗り越えようとせず、うまくこの夏休み期間を活用して、自分の居場所や、だれか相談できる相手を探してほしい」(浅川さん)
「子どもが学校に行けなくなるというのは、とても不安なこと。でも、“学校に行かない”という行動は、子どもからのSOS。まずは休ませて、心を落ち着かせて安心させてもらえたらと思うし、保護者の方も1人で悩まないで、周りや外部の人に相談するというのも1つの手かなと思う」(浅川さんの母親)
最後に、このラジオ番組の聞き手で、自らもフリースクールの顧問を務めるフリーアナウンサーの丸岡いずみさんがコメント。「学校に行きたくないと思っても、ぜひ相談してほしい。皆さんの居場所はたくさんある。学校に行けない、現状から逃げ出したいというのは、決して悪いことでもなんでもない。新しいことにチャレンジする一歩かもしれないと、当事者の子ともたちにも、保護者の方にもとらえてほしい」と呼びかけていました。
※ラジオ関西『栄光のレジェンド〜未来に向かって〜』2023年8月20日放送回より