今や、日本人の11人に1人がグレーゾーンに属するとされる「発達障害」(※1)。生きづらさを抱える人も多いといいます。関西を拠点に、人気テレビ番組のナレーターやキャラクターの声優として活動する中村郁さんも、自身の発達障害と向き合う一人です。
そんな中村さんが、このほどラジオ番組に出演。社会になじめず悩んでいた過去や、その中で声の仕事を始めるきっかけになった出来事、7月に出版された自身初の著書「発達障害で『ぐちゃぐちゃな私』が最高に輝く方法」(秀和システム)に込めた思いを語りました。
幼少期から、「人混みに行くと頭痛がする」「人見知りで友人ができない・遊べない」などの症状に悩まされてきた中村さん。違和感を抱くようになったのは、大学生になり、アルバイトを始めたときだといいます。
記憶力が良く勉強面で困ることはなかったものの、アルバイトとなるとなぜかうまくいかず、すぐにクビになってしまったとのこと。「言われたことを効率よくこなせない」「トイレ掃除を任せられると、気づけば2〜3時間が経っていた」などが理由でした。
実際に診断を受けたのは今から約5年前のことでした。そこに至るまでにも、“過集中”のほか、「してはいけないとわかっていても遅刻をしてしまう」「忘れ物が多い」など、多くの壁にぶつかってきました。
しかし、それぞれの障害と向き合ってきた中村さんは数多くの対応策も見つけてきたといいます。「失くしがちな自宅のカギはスペアを多く作っておく」「靴下は同じ色・デザインのものを履く」など、著書にもさまざまなアイデアがつづられています。
ナレーター・声優の職に就くきっかけは、歌手を志していた大学生のころに訪れたそう。当時師事していた作曲の講師に「アルバイトはすべてクビになるし、社会不適合者だと言われている。こんな私ができる仕事なんてないと思うけれど、音楽を続けたい」と相談したところ、「あなたの声は変わっているから、声優やナレーションという仕事があるよ」という言葉とともに、現在所属する事務所(声のプロダクション「キャラ」)を紹介されたといいます。
大学卒業とともに始めた声の仕事は、自身の得意な“集中力”を生かすことができます。中村さんは、現在に至るまでの約20年の間、産休以外で仕事を休んだことはありません。それはひとえに「声の仕事が好きだから」。仕事を心から愛しているからこそ「遅刻することもなくなったし、体も強くなって、続けることができている」と語りました。