女子サッカーの国内プロリーグ「WEリーグ」で、1年目に優勝、2年目に2位という成績を残したINAC神戸レオネッサ。タイトル奪還を目指して新シーズンに臨むチームには大きな変化がありました。8月24日に行われた「2023-24シーズン新体制発表会見」でのコメントを交えながら、新戦力をレポートします。
まずは新指揮官から。「サッカー先進国から指導者を招くことが必要。先進的な取り組みもしたい」(安本卓史社長)というクラブの意向のもと、WEリーグ初となる外国人監督で、スペイン人のジョルディ・フェロン氏を招聘しました。スペインの名門・FCバルセロナの育成組織「ラ・マシア」出身で、現役時代はバルセロナBやレアル・サラゴサなどでプレー。2000年シドニー五輪ではシャビ氏らとともに銀メダル獲得に貢献。現役引退後は女子サッカーの指導に長らく携わってきた、ジョルディ新監督。「来日は大きなチャレンジ」と述べた会見の場で、今シーズンの目標として、色紙にスペイン語で「チーム」を意味する「Equipo」とつづりました。
「チーム=家族とも表現できる。安本社長、スタッフ、選手、INACを取り囲む皆さん、アカデミーも含めて、私にとっては家族同様。この家族を大切にしたい。意気込みは、大切な家族を、1つの強いチームとして作り上げること」を目指すというジョルディ監督。「ボールを保持すること、堅固な守備などを求めてやっていきたい。選手一人ひとりの個性いかしつつ、まとまったチーム作りをしたい」と意気込みを述べていました。WEリーグ1年目の星川敬氏(優勝)、2年目の朴康造氏(2位)と、それぞれの特色を出しながら上位争いを続けてきたINAC神戸。リーグ制覇という大目標のため、女子W杯優勝国からやってきた情熱家のタクトには、注目せずにはいられません。なお、会見で司会を務めた宮川陽香(ラジオ関西『カンピオーネ!レオネッサ!!』パーソナリティー)によると、「ジョルディ監督はしゃべるのが好きな方。今後もいろんなお話を聞けるのが楽しみです!」とのことです。
選手に目を移すと、引退や移籍で、このオフにMF伊藤美紀選手(→三菱重工浦和レッズレディース)、MF阪口萌乃選手(→大宮アルディージャVENTUS)、MF脇阪麗奈選手やDF小山史乃観選手(以上、→セレッソ大阪ヤンマーレディース)といった主力4人を含む7人がチームを去りました。その一方で、なでしこジャパン経験のある選手から、今後が有望な若手まで5人の新戦力を迎え入れました。
目標に「アシスト王!!」と記したのは、2020年以来の復帰となった、元なでしこジャパンMF増矢理花選手。2シーズンを過ごしたサンフレッチェ広島レジーナではけがもあって苦しい時期を過ごしていましたが、昨シーズンはINAC神戸戦でゴール。「高卒から約7年お世話になったこのチームでもう一度プレーできるのは楽しみ」という徳島出身の背番号8は、「持ち味は攻撃にかかわるプレー、起点になること。ゴールはもちろん、たくさんのゴールに絡みたい。チームに貢献、リーグ優勝目指してがんばりたい」と気合いを込めていました。エースFW田中美南選手との前線でのコンビプレーにも注目です。
増矢選手と同じような目標を掲げたのは、アルビレックス新潟レディースからやってきた元なでしこジャパンMF北川ひかる選手。色紙に書いたのは「7アシスト」です。安本社長から2年続けてオファーを受け、「大好きな新潟を離れて」覚悟を持って神戸に来たというWEリーグ屈指の人気を誇るサイドアタッカーは、「レベルの高い選手が多いなか、自分がどれだけできるかもう一度示したい」と意欲十分。左サイドを躍動し、素敵なスマイルがピッチで見られるときが楽しみです。安本社長が「(アレックス)モーガン選手(アメリカ女子代表のスーパースター)が来たらいいな(笑)」と思ってあけていた特別な番号「13」を担います。
増矢選手と同じく、広島からやってきたのは、DF松原優菜選手。大阪府高石市出身、セレッソ育ちというのは、以前INAC神戸でプレーしていたなでしこジャパンFW浜野まいか選手と同じ経歴です。安本社長も「昨年いた選手が別クラブに行き、補強しなければいけないポジションにあてはまった。本人はあまり饒舌ではないが、中に秘めた闘志もちあわせている。きっと新しい血をいれてくれる」と期待を寄せます。背番号6は、「小さい頃から見ていたINACの一員としてプレーできるのが本当に楽しみ。目標は攻守に走ること。献身的なプレーをベースに、経験ある実力ある選手からいろんなことを吸収して、どんどん成長できれば」と新天地での決意を語っていました。
そして、長年チームに在籍し、昨シーズン限りで現役を引退した武仲麗依選手に代わって、GKの一角に入るのが、ちふれASエルフェン埼玉から完全移籍加入したGK船田麻友選手。絶対的な守護神・山下杏也加選手がいるなかでも、「頭もよくバランスとれる。大事な戦力。貴重な選手として獲得した」と安本社長は言います。「常に良い準備をする!」を色紙にしたためた背番号21は、「GKというポジションは試合に1人しか出られない、何があるかわからない特殊なポジション。自分に何ができるか常に考えて、個人としても常にいい準備をして、チームとしてもどんな準備をすればいいか考えてプレーしたい」と抱負を述べました。