俳優の林遣都さんが、1日、自身が主演を務める舞台、音楽劇『浅草キッド』の合同取材会に臨み、意気込みを語りました。
音楽劇『浅草キッド』は、ビートたけし(北野武)さんがかつての師匠・深見千三郎さんと出会い、浅草・フランス座で下積み生活を過ごした青春時代と、苦楽を共にした芸人たちとの生き様を描く自伝小説「浅草キッド」(講談社刊)を原作とする舞台作品です。
今回、初の音楽劇に挑むだけでなく、主人公の北野武という大役を演じる林さん。「まさか自分に(役が)来ると思っていなかったので、とても驚きました。(決まった)当時は『自分でいいのかな』という思いもありましたが、やるからには覚悟をもって取り組まないとなと思いました」と、率直な心境を明かします。
ただし、たけしさんを演じる重圧については、東京での制作発表会見をはじめ、各所で言われ続けたこともあってでしょうか、「正直、いま、僕としましては、もうそこは乗り越えている段階。あまり自分自身に必要以上に重圧をかけないようにしています」とキッパリ。プレッシャーもありつつ、「それよりも、今はたけしさんをやれることの喜びだったり、今回ご一緒させていただく(脚本・演出の)福原(充則)さんや山本耕史さんたちと、これから本番に向けて(舞台を)作っていけることの楽しさが上回っています。いま、重圧はすべて力に変えているという感じです!」と前を向いていました。
たけしさんは、よくものまねをされるような独特の癖なども印象的です。しかし、「たけしさん役をやるうえで、もう早い段階で、真似しようと思ったら(たけしさんから)遠のいてしまうなという自分の考えというか、抱いた思いがあった」と林さんは述べます。
それでも、たけしさんのこれまでの著作などを通して「本質の部分に目を向けてというか、そこを探して、それを自分に落とし込めたら」と、たけしさん役を演じるうえでの研究にも余念はないよう。「(たけしさんと)見た目も声も違うのですが、たけしさんを垣間見せる瞬間があったり、『あっ、若い頃ってきっとこうだったんじゃないかな』ってお客さんに思わせるところを目指したい」と、役作りへの思いも語っていました。
脚本・演出を手掛ける福原さんの舞台に出ることは念願だったそう。今は「稽古が楽しくてたまらないですね」と、充実感をのぞかせます。「毎日お昼前に集まって、夜までやっているのですが、時間が過ぎるのがあっという間で。自分が演出を受けることもそうですし、周りの方、スタッフの方に対して、福原さんが一つひとつ積み上げていく過程をみるのがすごく楽しくて。演出も面白くて、なるほどなと思う連続というか。福原さんの言葉をその都度、台本にメモしたりしていますね」と、現場の雰囲気の良さも明かしていました。
『浅草キッド』は、たけしさんの浅草・フランス座でのエピソードが描かれていることもあり、その初の舞台化としても注目されます。舞台で演じる魅力について、「僕の年代など(当時を)知らない人はこんな町があったんだなと感じたり、当時の時代を生きた方々だったら、どこかなつかしい音だったりにおいを感じたりというのは、舞台だからこそ伝わってくるものが、お客さんにはあるのかなと思っています。美術や照明もそう」と、生で演じる醍醐味を話します。東京の明治座、大阪の新歌舞伎座など、上演する劇場の雰囲気もこの作品に力を添える1つだという林さんは、「本当に、何も考えずに来ていただいて、非現実を楽しんでもらえたらなと思います」と述べていました。
今回は音楽劇ということで、歌あり、タップダンスありと、エンターテインメント作品としても楽しめる内容になっている、『浅草キッド』。「自分自身が今回脚本を読んで、(益田)トッシュさんの音楽を聴いて、タップダンスの先生であるRONxII(ロンロン)さんのタップを間近で見て、本当に感動して、それを全部託されているので。自分が最初に思った、曲だったり本に対して抱いた感情だったりを、しっかりとお客さんにも感じてもらえるように、最低限、つとめなきゃなと思っています。そのために全公演、まず第一に、万全の状態で終えられるよう、日々、気を付けて過ごしていきたいなと思っています」と、気合いを込めていました。