最近ではペーパーレス化が進み、印刷業界では、厳しい状況下で各社が新しいチャレンジに取り組んでいる。そのような中、「ストーンペーパー」や「バナナペーパー」という、あまり聞きなじみのない紙を扱っている会社が兵庫県神戸市にある。共栄印刷株式会社の代表取締役社長、柳有香さんに話を聞いた。
同社は創業100年を超える老舗印刷所。兵庫県の印刷組合に属する会員数は約100を数えるが、その中で女性の経営者は柳さんただ一人。印刷業界は現在変革期を迎えているといい、同社でも他社のHP作りを手がけるなど新たな事業を展開している。
取り扱う紙商品の一つが「バナナペーパー」。バナナの茎の繊維にFSC認証パルプを加えて作った紙で、日本初のフェアトレード認証紙となった。
この紙の誕生にはアフリカの国、ザンビアが深く関わっている。
ザンビアでは以前、現地の人が生きて行くために野生動物を捕獲して食べていた。しかし、だんだんと密漁が問題に。女性は主に国立公園の木を薪にして生計を立る状態だったが、そこへ、バナナ農園を作って現地で雇用を生む動きが出てきた。
その農園で、ゴミとして大量に出るバナナの茎から繊維を取り出し、日本の越前和紙の製法を用いて作られたのがバナナペーパーだ。つまりバナナペーパーの製造は、環境問題や途上国の貧困問題、女性の自立支援に加え、日本の伝統技術の継承にもつながっていると言える。
同社では他にも、消費期限切れで食べられなくなってしまった“備蓄米”を材料に作られた「米紙」も扱っている。さらには「竹紙」も。近年深刻化し、環境に大きな影響を及ぼすとして懸念されているのが、放置竹林による竹害。その竹を材料に用いた。