日本国際博覧会協会・十倉雅和会長(経団連会長)は9月29日、東京都内で同日開いた理事会後の記者会見で、資材価格や人件費の高騰を念頭に「(建設費の上振れを)見通せなかったのは申し訳ないが、世界情勢の影響などに起因し、不可抗力の部分もある」と説明した。
建設費は現在の1850億円から2300億円程度に増えるとみられるが、土倉会長は「国内のパビリオン建設費の推移を見るに、かなりタイトな印象だ。国も同じ認識を持っており、相当程度の額が積み増されると思うが、上げる幅をできるだけ抑えたい」とした。
会場建設費は国、大阪府・市、経済界で、原則的に3分の1ずつ負担すると取り決めている。十倉会長は「どこからどこまでを建設費と定義するかは難しく、予算がからむので軽々に金額提示はできないが、上振れ後もこの枠組みを維持する」と話した。
このうち経済界については「関経連(関西経済連合会)会長の松本正義氏(住友電工会長)や経団連副会長の国部毅氏(三井住友FG会長)の尽力で、増額分を実現できる程度の数字は集まっているという認識だ」としている。
大阪・関西万博では海外パビリオンの建設遅れが問題となっている。参加国・地域が自前で建設する、独自性の高い「タイプA」を希望する国・地域は56。博覧会協会の石毛博行事務総長は、このうち20か国について建設業者が決まったことを明らかにした。
建設業者との契約交渉が遅れている状況を踏まえ、博覧会協会は2023年夏から、「タイプA」に該当する国に対して、設計を簡素化した「タイプX」への移行を提案している。しかし、博覧会協会が 「タイプX」 として建設代行を受け入れたのは1か国(アフリカ南部・アンゴラ共和国)のみにとどまる。
「タイプX」の回答締め切りについて石毛事務総長は、「(該当する各国)個々に打ち合わせをしながら進めている。各国の進捗状況や理解を得られないまま(期日を)決めるわけにはいかず、『いつがデッドラインだ』と話すのは、今は適当ではない」と明言を避けたが、着工期限を2023年12月~2024年1月までとし、一定の道筋を示した。
そして具体的な建設費増額の幅や、博覧会協会が行っている費用の精査の終了時期について言及せず、増加が予想される会場警備費についても、「具体的数字が国から上がっていない」と話すにとどめた。
博覧会協会は2023年11月中旬、大阪・関西万博の公式参加国を対象とした「International Participants Meeting(IPM・国際参加国会議)」を大阪で2日間開く。
2022年10月、2023年6月に「国際企画会議」が開かれ、参加各国に会場・夢洲の視察のほか、出展に向けた準備の加速を促した。
「参加国会議」については、これまでよりフェーズを上げ、事業プロデューサーや会場デザイン担当者を交え、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」について、各国に改めてコンセプトの共有を求める。
また、各国のパビリオンに関して、ディスプレイを施工する事業者の確保、会期中の各国スタッフの住環境についての情報提供(アコモデーション)など具体的、実務的な内容となる見込み。