2023年のノーベル賞・文学賞をスウェーデン・アカデミーが発表し、有力候補とされた作家の村上春樹さん(74)の受賞はなりませんでした。
村上さんは1949年に京都市で生まれ、西宮市と芦屋市で育ちました。兵庫県立神戸高校、早稲田大学を卒業し、1979年、神戸を舞台にした「風の歌を聴け」でデビュー、「ノルウェイの森」など、これまでの作品は50カ国語以上に翻訳されています。2006年にフランツ・カフカ賞を受賞して以降、毎年、ノーベル文学賞の有力候補に挙げられています。
村上さんのエッセイ「辺境・近境」で描かれた、オープンから61周年の老舗イタリアンレストラン「ピノッキオ」(神戸市中央区)には5日夜、垂れ幕などが準備される中、「ハルキスト」と呼ばれる村上さんのファンが集い、YouTubeで発表の様子を見守りました。受賞を逃したことがわかると、「残念やね」などと声が上がり、続いて「残念会」と称し、シャンパンで乾杯しました。
この恒例イベントは、今年で11年目です。全作品を読んだというファンの女性(68)は、「(受賞を逃して)残念だけど、これからも村上さんの言葉が世界中に広がってくれたらうれしいです。来年は、村上さんがまた長編を書いてくれたら」と期待を寄せ、オーナーシェフの山中崇裕さん(68)は、「結果はどうであれ、村上さんがいるおかげで、みなさんと今年も顔を合わすことができた喜びをきょうは分かち合いたい。来年こそは、受賞を祝う垂れ幕を降ろしていいお酒を飲みたい」と前を向きました。
神戸高校の卒業生でつくる同窓会は、「たいへん残念。作品の素晴らしさがそれによって左右されるものではなく、これからも村上さんの作品を愛し続け、応援する」と報道各社へコメントを寄せました。また、神戸高校の西田利也・校長は、「本校の卒業生である村上春樹さんの存在は、生徒たちの誇りであり希望です。私たちはこれからも、村上春樹ワールドとの新たな出会いを心待ちにしています」とコメントしました。