小松氏は2022年、空海が高野山奥の院に入定(永遠の瞑想に入ること)したとされる日の法要「正御影供(※)」が東寺で行われる4月21日から約1か月、小松氏は境内の食堂(じきどう)に籠って、曼荼羅の制作に没頭した。
東寺の飛鷹全隆(ひだか・ぜんりゅう)長者(住職)が高野山別格本山・三宝院住職だった時に、小松さんに作品を制作を依頼したのがきっかけだった。
飛鷹長者は「現代の曼荼羅を小松氏に描いてもらい、世界平和を祈りたい」と思ったという。そして「彼女の作品から、とても清らかなものを感じた」と話す。小松氏も制作期間を「アーティスト人生で、貴重な“魂の学び”だった」と振り返る。
東寺の境内をめぐり、高野山の御廟「奥の院」を歩くと、アーティストのみならず、特に欧米人がその静寂と神秘性に魅了される。
小松氏もその空間で、研ぎ澄まされたインスピレーションがあふれ出したという。東寺での制作初日、小松氏は2時間瞑想した。その時、飛鷹長者は隣りでずっと祈りを捧げていたという。一般の拝観時間が過ぎ、誰もいないゆったりと時が流れる中、夕暮れを感じながら絵筆を進めた日もあった。
■描くことは、祈りにつながる
下絵がなく、「自我があってはいけない」と思いながらインスピレーションで描く小松氏。広大な東寺の境内で、時折聞こえてくる読経や、多くの外国人が感動する姿を目にして、「アートは人の心や魂を救う薬である」と実感したという。
そして、祈りに”壁”はなく、多くの人の祈りが東寺に集まり、作品のタイトル通り「大調和」につながればと願う。なお、今回の特別公開に先立ち、2022年6月25日から約2か月間、神奈川県川崎市の「岡本太郎美術館」でも公開され、大きな反響があったという。