多神教として知られるヒンドゥー教の様々な神像と人々との関わりに焦点をあてた特別展「交感する神と人―ヒンドゥー神像の世界」が、国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園)で開かれている。2023年12月5日(火)まで。
ヒンドゥー教の神々は、様々な素材で作られた神像となり、人びとの前に姿を現す。儀礼的な儀式で用いられる立像、仮面だけでなく、絵画や印刷物、タイル、絵本、コミックなど身近なものにもその姿を見ることができ、人と神が交流する重要な媒体となっている。人びとは神像を沐浴させたり、着飾らせたりして神像をいとおしみ、神に願いを届けようとしている。特別展では、そんな「神への愛」に基づいた神と人間の交流の様々な形を紹介する。
人びとは神々とどのように交流するのか。例えばヒンドゥー教の三大神の一人・ヴィシュヌの8番目の化身クリシュナは、愛らしい幼な子の姿をした神としても篤く信仰されている。会場では、幼な子の姿をしたクリシュナに服を着せてブランコに乗せて慈しむという、クリシュナ神の誕生を祝う祭りの一場面を再現している。また神像を「着せ替え人形のように」着飾るための装飾品も展示している。また、神をモチーフにしたポスターなども多く作られ、人々は壁に飾るだけでなく、スパンコールや布を張って美しくデコレーションすることもあるという。
神が描かれているのは、印刷物やタイルなど多様で、インド・ネパールだけでなく、日本やヨーロッパで作られているものもある。このうちマッチラベルは明治から大正時代にかけて神戸から輸出されていたという。
また、香を焚いたり、打楽器の演奏など五感を通じて神と交流することもあり、会場では、インドの寺院で使われている打楽器の自動演奏を聴くこともできる。この他、季節に合わせて行われる様々な祭礼をパネルや映像などで紹介する。