外国に住んで、母国の良さを再認識することもあれば、その国の文化・習慣が母国にもあればと感じることもあるでしょう。このコラムでは、元新聞記者で、現在二児の母としてマレーシアで暮らす斉藤絵美さんが、カルチャーショックを受けた現地での出来事について紹介します。今回取り上げるのは、フルーツの王様と呼ばれる「ドリアン」です。
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夫の転勤に伴って、子ども2人とともにマレーシアに移住したのは2022年3月。断食(ラマダン)や旧正月のお祝いなど日本にはなかった慣習も一通り経験し、生活には慣れてきましたが、どうしても克服できないのが、夏を過ぎたころからどこからともなく匂い始める“あの存在”です。
日本では食べる機会はほとんどないと思いますが、独特な匂いのフルーツとして多くの人がその存在を知っているのが「ドリアン」。一大産地国のここマレーシアでは、なんとドリアンパーティーなるものまで存在するのです。
9月中旬のある日。午後5時を過ぎると、広いテラス席があるレストランに、続々とローカル(地元)の人が集まってきました。見た感じでは、ゆうに100人を超えています。入り口に掲げられた横断幕には、会社名と「durian party(ドリアンパーティー)」の文字が踊っています。
店の隅には高く積み上げられたドリアン。店員がナタ包丁を使って、次々と殻を叩き割って、実を出していきます。周辺は何とも言えない匂いが充満し、会場のあちらこちらに設置された扇風機から匂いが遠くまで運ばれていきます。
しかし、そんなことはお構いなし。ローカルの人たちはテーブルに分かれてお喋りを楽しみながら、ココナッツジュースとともに手掴みでドリアンを口に運んでいきます。この宴は、日が沈む午後7時すぎまで続いていました。