《旧統一教会・解散命令請求》なおも残された”政治との癒着”課題、懸念は? 弁護士はどう見る | ラジトピ ラジオ関西トピックス

《旧統一教会・解散命令請求》なおも残された”政治との癒着”課題、懸念は? 弁護士はどう見る

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 政府は10月13日、東京地裁に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を求める申立書を提出し、受理された。

 文部科学省によると、旧統一教会による多額の献金要求や霊感商法などによる金銭トラブル被害は、遅くとも1980(昭和55)年ごろからあり、その被害者は約1550人に及び、約204億円にものぼるとされている。

 そのうえで、これらの金銭トラブルに旧統一教会が関与してきたとの判断のもと「組織性」「継続性」「悪質性」があるとして、宗教法人法が解散要件として掲げる「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」に該当すると結論付けた。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)本部(東京都渋谷区)

 今後、「非訟事件(※)手続法」により、東京地裁が非公開で解散命令の適否を審理することになるが、申立書には、約5000点(ダンボール箱20個分)もの証拠資料が添付されている反面、旧統一教会側は「解散事由に当たる行為はない。信教の自由のみならず人権にとっても深刻な事態」などと強く反論・反発していることから、審理の長期化が予想される。

 法令違反を理由に裁判所から解散命令を受けた宗教法人は、オウム真理教(東京・地下鉄サリン事件、松本サリン事件、坂本堤弁護士一家殺害事件など)と明覚寺(和歌山・霊視商法詐欺事件)の2件。オウム真理教は請求から約7か月、明覚寺は解散が確定するまで約3年を費やした。いずれも教団幹部が立件され、刑事事件として扱われたが、民法の違法行為に基づく解散命令請求は旧統一教会が初めてとなる。

東京地裁

 東京地裁の審理のゆくえとともに、旧統一教会に解散命令が出された場合の教団財産の保全問題に大きな関心が寄せられている。

 組織におけるコンプライアンス(法令遵守)に詳しい藤本尚道弁護士に聞いた。

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■朝令暮改も、逃げ腰ではなかった政府の姿勢

 藤本弁護士はまず、法令違反の定義・解釈について、「政府は当初、信教の自由を保障する憲法上の観点から、解散命令の請求には慎重な立場をとっていた。2022年9月の時点で、文化庁の担当者は『旧統一教会の役職員に刑罰が科された事案は把握しておらず、解散命令の請求の要件を満たしていない』との見解を述べていたし、岸田文雄首相も同年10月の国会答弁で、『解散命令を請求する要件である”法令違反”とは刑事事件を指す』との見解を示して、旧統一教会の調査には消極的な姿勢を示した。

 しかし、その翌日(10月19日)には『民法の不法行為などの法令違反も、要件に入り得ると整理した』と、元の答弁を修正、解釈の変更を明らかにしたが、その朝令暮改ぶりには批判が相次いだのもうなづける」と話した。

 その後の進捗は、必ずしも「迅速」とは言い難いが、それでも文化庁は宗教法人法に基づく「質問権」を7回も行使し、旧統一教会から多数の資料を徴求したほか、170人以上の被害者らからの証言を得たうえで、最終的に「解散請求」に踏み切った。

 この点について「もちろん、一連の手続においては、憲法が保障する信教の自由に対する配慮も必要であるが、信教の自由を盾に回答を拒む旧統一教会の姿勢に対し、逃げ腰、弱腰の対応をとっておれば、問題の解決を長引かせ、被害者をさらに増加させることにもなりかねない。その意味で、慎重さと適正手続の両立を踏まえたうえでの結論と言うべきであろう」と一定の評価をした。

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