もしも、車にカーナビがなかったら……。平成以降に生まれた人たちにとっては考えられない日常かもしれませんが、昭和世代にとっては当たり前。カーナビがなかった当時は、迷子にならないよう前日から道路マップを見てルートを考え、万全を尽くしていたのだそう。
カーナビの元祖ともいえる“道路マップ”について、『マップル』をはじめとした人気道路マップを刊行してきた、株式会社昭文社ホールディングスの竹内さんに話を聞きました。
―――道路マップはいつごろ登場した?
【竹内さん】 地図帳スタイルは1970年代から広く出版されるようになり、このころのメインユーザーは物流の長距離ドライバーでした。荷物を遠くまで運ぶ手段としてはもともと鉄道や船などがメインでしたが、高速道路の建設とともにドライバーのための主要道路の地図が普及していきました。
―――一般の人たちにはいつごろから普及した?
【竹内さん】 1980年代には高速道路やバイパスなどの道路整備が進み、ロングドライブをする一般の人が増えていきました。1984年にはリンゴが表紙の地図帳『マップル』(B4判サイズ)が誕生し、これが爆発的ヒット。このころから「車1台に地図帳が1冊」という時代になりました。当時は、「リンゴマークといえばマップル(=道路マップ)」と思い浮かべる人が多かったんです。
―――従来の地図との違いは?
【竹内さん】 従来の地図は主要な道路や高速などの情報がメインでしたが、マップルではそれに加えてゴルフ場や観光名所など、一般ドライバーのためのレジャー・観光情報を多数掲載していました。
1980年代後半になると、信号や交差点名のほか、コンビニやファミリーレストランをはじめとしたロードサイド店舗など新たな業態の施設についても記載されるように。これらはドライブ中に立ち寄るスポットであるとともに、運転中の目印としても重要だったため、情報を収集し地図上に記載することはとても重要でした。
掲載情報が増えた結果、それまで1センチで1キロだった表記が、1センチで100メートル、1センチで150メートルなど、より細かな情報が記載された大縮尺の地図が多く収録されるようになりました。