稀代の芸術家・岡本太郎氏が制作した壁画『明日の神話』の大規模な修復作業が10月10日(火)から行なわれている。2008年に東京・渋谷駅の連絡通路に設置され15年。近年の酷暑もあり痛みが進んでいることから、初めての修復に踏み切ったという。
壁画の保全管理を行うNPO法人『明日の神話保全継承機構』事務局長の原和弘さんに話を聞いた。
岡本氏の代表作の一つ『明日の神話』は、苦難から立ち上がる人間の尊厳と力強さが表現された幅30メートル、高さ5.5メートルにも及ぶ巨大壁画だ。1968年にメキシコで制作されたのち一時行方が分からなくなり、2003年9月、メキシコシティ郊外の資材置き場で発見。日本へ移送後、1年間の修復作業を経て2008年11月に現在の場所に設置された。
この壁画がなぜ駅の連絡通路に置かれたのか。それは岡本氏の「芸術は暮らしの中に生きるもの」という思いを体現したからだと原さんは話す。
「1日30万人もの人が行き交う場所にあって、日常で誰もが自由に見られるアートとして親しまれています」(原さん)
一方で日光や高温にさらされることによる色あせやひび割れ、ほこりなどの汚れから壁画をどう守るかが課題となっていた。年に一度、ボランティアらによるすす払いを行ってきたが、次の世代にも『明日の神話』を継承していくため、今回の修復を決断したという。
修復を手掛けるのは、修復家の吉村絵美留さん。作業はまず汚れを落としてから色付けやひび割れの補修を行い、コーティング剤の塗装を施していく。作品が大きいことから足場を組む必要もあり、すべての作業が終わるまでには数年かかる見通しだ。
修復費用の一部に充てようとクラウドファンディングも実施し、既に目標金額を上回る支援が集まっているという。返礼品には壁画を守るメンバーの証として特別に制作した「壁守」メンバーシップカードや、『明日の神話』のこれまでの記録を写真とともにまとめた書籍、吉村さんが制作した公式レプリカなどを用意している。原さんは「『太陽の塔』と同時期に作られた傑作を守り、さらに多くの人に知っていただきたい」と呼びかけた。支援募集は、11月30日(木)午後11時59分59秒まで。
※ラジオ関西『羽川英樹ハッスル!』2023年9月28日放送回、「ハッスル応援団」より
◆クラウドファンディング「渋谷のパブリックアート|岡本太郎『明日の神話』をみんなの力で未来に!」
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