様々な県がコシヒカリの生産を始めたことで競争優位性がなくなってきたため、各自治体は新銘柄、いわゆる「ブランド米」を作るようになりました。従来、コシヒカリを超える人気の銘柄は出てきませんでしたが、「つや姫」や「ゆめぴりか」などが成功事例となったことで、各地で税収を上げるために新品種を作り始めたのだそうです。
一方、新品種に対して山下さんが「レジェンド品種」と呼ぶ在来品種もあります。
明治維新で日本は欧米と肩を並べることや石高を上げるために新政府が米を買いにかかりました。当時、白米の方が換金率が高かったため、古代種の生産が減少してしまいました。現在では品種の分別を機械で行うことができますが、昔は赤い色をした「赤米(あかまい)」や黒色の「紫黒米(しこくまい)」など品種ごとに分けることができなかったこともあり、白い米の換金率が高くなっていたそうです。これらのレジェンド品種は失われる危機にさらされているため、新旧で比較して食べるなど、保存していくために工夫が必要とのこと。
日本は各地で田んぼが見られますが、作られている米は人が食べる用、酒用、飼料用、米粉用などに分かれています。一般的に人の主食として食べられる米の生産が最も多いのですが、現在では米離れによって生産過剰になってきているそうです。
バブル以前は一般的な成人男性の米の年間消費量は約60キロでしたが、現在では年間約52キロに減ってきているとのこと。生産者が生活を維持するために、別口で飼料用の米を生産しているそうです。しかし動物は米だけでなく他の飼料も食べるため、米の販売量が増えないことが問題となっていて、生産者が米の生産を継続するために消費拡大を図る必要があると山下さんは話します。
米にはそれぞれ特色があり、カレーライス用の「華麗舞」や寿司用の「笑みの絆」など、料理に合わせたものも作られています。ほかにも一部産地では、米自体にポップコーンのような芳醇な香りがある「香り米」も注目されているそう。山下さん自身、米を楽しむことを大切にしながら、米の文化を再発見する気持ちで古代から栽培されていた希少種の香り米「ふさなり」の復興などにも精力的に取り組んでいます。
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「たかが米」と言うなかれ。全国の生産者は情熱と愛情をかけて育てています。それぞれの品種の違いを楽しみながら食べてみると、米の新たな魅力を発見できるかもしれませんね。
(取材・文=迫田ヒロミ)