2023シーズンのサッカー・J1リーグ戦も大詰め。ここまで勝点を62に伸ばして首位に立つヴィッセル神戸は、11月12日に行われる第32節で、3位の浦和レッズ(勝点54)と、アウェイの埼玉スタジアム2002で対戦します。この一戦について、6日放送のラジオ関西『GOGO!ヴィッセル神戸』にオンラインで出演したサッカージャーナリストの河治良幸さんが見どころを語りました。
10月28日のJ1第31節湘南ベルマーレとのアウェイ戦から、中2週間という間隔で、埼玉スタジアム2002に乗り込むヴィッセル。対して、4日にJリーグルヴァンカップ決勝、8日にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージの韓国・浦項での浦項スティーラーズ戦を経て、中3日でホームゲームに臨む浦和。日程面では対照的な両者の顔合わせとなります。
浦和は過密日程の最中ということもあり、ACL浦項戦など現地取材を行う河治さんは、チーム状況について、「現在はかなり状態が厳しくなっている。とんでもない試合数(11月9日現在で52試合)なので、ターンオーバーなどもきかなかったり、主力でどうしても外せない選手がいると続けて使わなきゃいけないような状態」とコメント。その影響からか、ルヴァン杯ではアビスパ福岡に敗れて準優勝、ACLでも浦項に逆転負けを喫するなど、この1週間で悔しい負けが続いてしまっています。さらに、6日には、DF酒井宏樹選手が傷めていた右ひざの手術を行い全治約3か月の見込みとクラブが発表。クライマックスに来て大黒柱がチームを離脱する緊急事態となっています。
それでも、リーグ戦では最近8戦負けなし(4勝4分け)と踏ん張り、わずかながら優勝の可能性を残している浦和。「パフォーマンスのアベレージが下がってきていても、要所をしっかり締めて、(リーグ戦で)負けないところだったり、相手の隙を逃さない(のが浦和の強み)。最近、すごいパフォーマンスだなという試合はなかなか見ることはできていないが、それでこの結果(J1で勝点54の3位、Jリーグルヴァンカップ準優勝など)を出しているのは本当にすごいなと、タフなチームだなと感じる」と、河治さん。
「マチェイ・スコルジャ監督の手腕もすごく大きいし、GK西川周作選手、DFアレクサンダー・ショルツ選手など要になる選手が、ちょっと緩んできていても要所でしっかり締め直すし、ピンチになっても耐えていい流れにつなげるような持って行き方がすごくうまい」と、指揮官やベテラン勢の影響力の大きさを長所に挙げます。ホーム・埼スタでの試合ということもあり、現状打破のためにも、かなりねじを巻きなおしてこの一戦に臨んでくることは容易に想像できます。
一方、今シーズンここまでのヴィッセルについて、河治さんは「前半の好調はそんなに驚きはなかったが、後半に向けてちょっと下がってくるんじゃないかという心配をしていた。夏の補強がカギになるのかなと思っていた」と、強度の高さを特長とするチームの夏場の戦いを注視していたよう。それでも、「いい意味での驚きとして、序盤戦はそんなに主力でもなかった選手たちがどんどん成長してきたことで、FW大迫勇也選手やFW武藤嘉紀選手ら主力中の主力、いわゆる“カンピオーネ”といった選手たちが疲れてきたところを、彼らがなんとかカバーして、支えている。いま、ベンチの層が厚くなってきている」と、最近の試合で活躍が目立つMF井出遥也選手、MF扇原貴宏選手らの台頭が、首位に立ち続けている要因とみています。
前節では絶対的な選手の1人、MF山口蛍選手が負傷欠場した影響などもあってか、J1残留争い中の湘南に苦戦。こちらも、準備期間でいかに立て直せるか、山口選手が復帰できるか、復帰できなかった場合はどんな策を打つのかが見どころになりそう。最近では上位対決で好マネジメントを見せてチームを勝利に導いている吉田孝行監督の手腕にも注目です。
ヴィッセルと浦和との前回の対戦は、シーズン前半の3月11日、ノエビアスタジアム神戸で行われ、そのときは前半21分に浦和が日本代表MF伊藤敦樹選手のゴールで先制。その1点が大きく響き、ヴィッセルは苦杯をなめました。クリムゾンレッドにとっては、今回、リベンジの機会。2位横浜F・マリノス(勝点60)に再び勝点差を縮められているだけに、悲願のJ1制覇のためにも、敵地ですが、勝利が欲しい試合です。
リーグ失点数最少の浦和(22失点)と、同2位のヴィッセル(27失点)の対戦ということで、「堅守vs堅守の戦いになる」と河治さん。「それを、浦和ならFWホセ・カンテ選手、神戸ならFW大迫選手が、どうこじ開けていくか。ハイレベルな戦いが楽しみ」と、前回の対戦と同じく、1点を争う攻防を予想します。
河治さんが注目選手にピックアップしたのは、浦和がカンテ選手、ヴィッセルはMF佐々木大樹選手です。