大阪にある家賃の安いアパートを舞台に、それぞれ事情を抱えた住人たちがゆるく生きる様子を描く群像劇です。映画『コーポ・ア・コーポ』が11月17日(金)から全国で順次公開されています。
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物語の舞台は、大阪にある古い木造アパート。関西で“文化住宅”と呼んでいましたが、昭和に建てられた家賃の安い物件です。アパートの名前はカタカナで「コーポ」といいます。風呂はなし。お湯は出ません。
主人公はこのコーポに住むユリ、25歳です。ユリが帰宅すると、住人の中で一番年長、66歳の宮地がアパートの廊下を歩き回りながらみんなの部屋に声をかけています。
「管理人さんが家賃回収に来よるで~。取り立てやで~」
それを聞いた住人たちは、急いで部屋を出て階段を降り、塀を乗り越えて留守を装います。
「山口さん、家賃の取り立てやで〜」
宮地は年配の男性・山口の部屋をノックしますが、出てくる様子がありません。ドアを開けると、山口が部屋で首をくくり亡くなっていました。
宮地は、家賃支払いを逃れるために外に出てじっとしているユリを見つけて、言いました。
「ユリちゃん、山口さん死によった」
ある日、ユリがコーポの外で猫を抱いていると、突然、弟のカズオが訪ねてきました。
「カズオ、ようココ分かったなあ」
「姉ちゃん、ばあちゃんやばい」
カズオによると祖母が入院したということで、二人で病院へ向かいます。病院でユリは、折り合いの悪い母親に会ってしまい、強烈なビンタを食らいました。祖母は年金をくずしてユリが進学する専門学校の学費を出してくれたのですが、ユリはすぐに辞めてしまったのです。ユリは家族のしがらみから逃げながらも、学費を返すため安アパートで暮らしながら居酒屋で働いています。
21歳の若者・鉄平は、建設現場で日雇いとして働き、カツカツの生活を送っています。鉄平は、山口から金を貸してくれと言われたのに自分が断ったから亡くなったのではないかと気にしています。
鉄平は女性にモテるのですがキレやすく、暴力を振るう癖があります。鉄平の父親はヤクザで、不甲斐ない息子を見て「自分の限界に気付け、ボケ!」と鉄平を殴りました。
鉄平が働く現場へ女子大生がアルバイトにやってきました。この女子大生が、鉄平から借りた雨ガッパとタオルを返しにサクランボを持ってコーポを訪れます。
36歳の中条は、いつもスーツ姿のイケメンです。
複雑な過去を背負っていて、文豪のような話し方で女性を口説き、貢がせて生活しています。架空の身の上話をでっち上げて金を受け取っていました。