スポーツの秋。野球やサッカー、バスケットボールなど日本人の我々にとって馴染みの深い競技はたくさんありますが、学校の体育の授業や温泉に行ったときに遊んだことのある卓球もその一つ。
多くの日本人選手が活躍する卓球ですが、意外と知られていないのがそのルール。注目してみると、ある“おもしろい決まりごと”がありました。それは「試合中に汗を拭くタイミング」です。卓球において、そんなことまでルールで決められていたなんて知っていましたか? 詳しい話を日本卓球協会ルール・審判委員会・委員長である中村喜一郎さんに聞きました。
卓球は膝を曲げた状態で激しく左右に移動するため、他のスポーツと同じくたっぷり汗をかきます。ですが、試合中にタオルを使用できるタイミングは両者の得点の合計が「6の倍数になる6ポイントごと」および「最終ゲームのチェンジエンド時」のみと決まっています。試合をなんとなく見ているだけだと気付きませんが、じつは選手達は決められたタイミングで汗を拭いているのです。
ただし例外もあります。眼鏡をかけている選手に限り、眼鏡が汗で濡れた場合はいつでも”眼鏡のみ”拭くことが許されているそう。その場合でも、“体の汗”を拭くことは許されていないとのことです。
では、どうしてこのようなルールが設定されたのでしょうか。
「選手が好きなタイミングでタオルを使ってしまうと試合時間が伸びてしまうことが理由のひとつに挙げられます。また、相手のペースを乱すためにタオルタイムを使うことも考えられるため、ルール上で6の倍数と決められました。タオルタイムが長いと審判から催促されることもあるそうです。たった数秒ですが、選手にとっては汗を拭くとともに戦術や作戦を整理し集中力を高めるために使われるため、とても大事な時間になります。また、試合中に選手が卓球台に触れる仕草がしばしば見られます。これは手汗を拭くことを目的にしているようですが、選手によってはルーティンとして行うこともあるようです」(中村さん)
このタオルタイム以外に、選手は試合中に1回だけタイムアウトを1分間取ることができます。
他にも、試合が長引かないようにするための「促進ルール」というものがあります。これはレシーバー(サービスを受ける選手)が13回返球すると、レシーバーのポイントになるというルールで、試合が長引かないようにするという目的で設定されたそう。その昔、卓球は守備型の選手が多かったことから「我慢比べ」のような状態になることが多々あり、試合時間が長くなる傾向にあったことからこのようなルールが作られたと言われています。
卓球は選手の集中力が高められた緊張感のある中で行われます。バレーボールやバドミントンと比べ、ネットがある競技の中でも選手同士の距離が近く、1対1でのガチンコ勝負を見ることができる点が卓球の魅力。ピンと張りつめた空気やスピード感、点数の取り方などの戦術が注目ポイントだと中村さんは話します。卓球はプレースタイルが多く、選手ごとに多様性があり小学生が大人に勝つこともあるほど“体格差”によって左右されない競技でもあります。
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ユニークなルールに着目するなど、いつもと違った視点でスポーツを見てみると、より楽しめるかもしれません。
(取材・文=迫田ヒロミ)