「好奇心がありすぎる」 国内外で活躍する能楽師・安田登 高校教員、探偵、文筆家…多彩な経歴も | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「好奇心がありすぎる」 国内外で活躍する能楽師・安田登 高校教員、探偵、文筆家…多彩な経歴も

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 劇作家・演出家 平田オリザさんのラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、能楽師の安田登さんが出演。意外にも初顔合わせとなった2人だが、「共通の知り合いはたくさんいるので初めてという気はしない」と意気投合。2週にわたり、さまざまなトークを展開した。

能楽師・安田登さん(写真中央)、番組パーソナリティーの平田オリザ(同右)、田名部真理(同左)

 1956年、千葉県銚子市出身の安田さん。大学卒業後、一度は高校教員となったが、ワキ方の重鎮・鏑木岑男氏の謡に衝撃を受け、27歳のときに入門。現在は、下掛宝生流ワキ方能楽師として国内外の舞台に出演している。能のメソッドを取り入れた作品を意欲的に創作しているほか、身体論や児童文学をはじめとした著作を持つ。その活動は多岐にわたり、安田さんのプロフィールにはユニークな“厚み”がある。

 高校時代、安田さんはバンドに明け暮れた。家にも帰らずバンド小屋で麻雀やポーカーをやっているうちに、「なぜ麻雀は9牌でトランプは13枚なのか。なぜトランプは4種で麻雀牌は……」と考えていたら中国古代哲学に興味がわき、大学では中国文学を専攻。「卒業時には漢和辞典の執筆者の一員になっていた」という、仰天エピソードも飛び出した。

 能楽師になる前は高校教員を務めていたが、赴任先の学校は勉強があまり好きでない生徒が多かったため、教科書をあまり用いず、生徒の「なぜ」にとことん向き合う授業を実践したのだとか。ほかにも、ロルファー(筋肉を緩めることで効率よく体を活性化するボディワークの施術者)、探偵、風水やゲーム本の執筆など、さまざまな職業を経験したという。

 安田さんが能と出会ったのは、偶然の出来事だった。同僚の代わりに観劇した舞台で、のちの師匠となる鏑木氏の声に圧倒されたのだ。その後、運よく入門することができ、教員とのダブルワークを経て能楽師となった。

 自身の経歴を振り返り、「好奇心がありすぎて、どうもひとつのことに絞れない」と自己分析。現在、関西大学(大阪府吹田市)の特別任用教授として、「VRと古典との関係を考える」をテーマに講義を行っている。

「たとえば、六義園(東京都文京区)には和歌や中国の古典にちなんだ景色が88か所も織り込まれており、それぞれに石柱が立てられています。石柱に書かれた句を見ることで、短歌に詠まれた景色と目の前の景色とを重ねることになる。まさに、『AR』(Augmented Reality=拡張現実)の世界。江戸時代の人はそれを脳内で行っていた。現代人は『ARを使って、もう1度脳を活性化できないか』と考えているんです」(安田さん)

 次週は、近著『学びのきほん 使える儒教』(NHK出版)から、現代人の生きづらさに対するアプローチについて考える。

能楽師・安田登さん(写真中央)、番組パーソナリティーの平田オリザ(同右)、田名部真理(同左)

※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2023年11月30日放送回より

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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp

『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。

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