美術館が所蔵するコレクションから注目する作品や作家を、現代を生きる作家が調査研究し、新しい視点で紹介する特別展「art resonance vol.01 時代の解凍」が、芦屋市立美術博物館で開かれている。2024年2月4日(日)まで。
芦屋市立美術博物館は、美術作品として約130人の作家の作品、1500点を所蔵する。本展ではこのコレクションから、関西を拠点に国内外で活動する4人の作家が、注目する作品や作家を選び、1年以上をかけて研究、多様な方法でアプローチし、新たな解釈やこれまで表には出ていなかった人物像を浮かびあがらせ、そこから生み出した自身の新作も展示する。
近年、リサーチをもとにしたドキュメンタリー形式の映像の制作を手掛ける髙橋耕平さんは、詩人としても活躍した津高和一(つたか・わいち)を取り上げた。津高は、自宅の庭に作品を展示した「対話のための作品展」(1962~1981)や、夙川公園にプロアマ問わず作品を展示した「架空通信テント美術館」を開催するなど、作品を仲介としたコミュニケーションを試み、「対話」の大切さを提案する活動を行った。髙橋さんは、テント生地の上に記録写真や不要になったと思われるものをオブジェとして配置し「絵画」を作った。津高が試みた「作品と作品が置かれる場を通した対話」の継承を試みる。
黒田大スケさんは、最近はアーティスト、特に彫刻家について調べ、それをもとに「なりきって」演じる映像作品を発表している。台本はなく即興的に演じることで、その人と自分が混じりあったものを出そうと試みているという。黒田さんが選んだのは、具体美術協会の田中敦子と、3人の彫刻家・堀内正和、柳原義達、エミール=アントワーヌ・ブールデル。田中は具体を代表するアーティストとして議論や考察が絶えないが、本人による言葉は多く残っていない。黒田さんは、田中の代表作「ベル」や「電気服」などの制作をサポートした影の立役者=電気屋の視点で、また3人の彫刻家はそれぞれに「なりきって」、その背景や制作に取り組む姿勢などを語る。4人が「グループ展をしよう!」と話し合う映像作品もあるが、果たしてどんな話し合いになっているのか…。