作家が作家を研究 新たなアプローチで読み解く「時代の解凍」展 芦屋市立美術博物館 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

作家が作家を研究 新たなアプローチで読み解く「時代の解凍」展 芦屋市立美術博物館

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 野原万里絵さんは、山田正亮に注目した。抽象絵画を確立した一人と言われる山田は、生涯で5000点もの作品を残したほか、スケッチや課題に対するメモ、その時に感じたであろう言葉を50冊以上の制作ノートに綴っている。野原さんは、まずは作品をじっくり何度も見て、自分でも描き、制作ノートを読み込むなどして、山田が「なぜ描いたのか」「どのように描いていったのか」など山田の姿に迫った。

山田正亮『Still Life no.51』1952年 芦屋市立美術博物館蔵
山田正亮『Still Life no.51』1952年 芦屋市立美術博物館蔵
展示風景:野原万里絵による作品 2023年 作家蔵
展示風景:野原万里絵による作品 2023年 作家蔵

 藤本由紀夫さんが取り上げたのは、山崎つる子の1964年の作品『作品』。さまざまな角度から検証し、この1点から何が読み取れるかに挑戦した。山崎は1950年代から金属を素材に取り入れたり、ストライプを多用するなど、当時としては「とても新しい」作品づくりに取り組んでいた。一方で、海外でも同じような視点を持つアーティストが同時期にいたことがわかり、その類似性の面白さも紹介する。通常絵画は、壁に掛けられる展示が多いが、『作品』は展示室の中央に「壁から離した状態」で展示されている。「壁掛け」では見えなかった何かが見えてくる。

山崎つる子『作品』1964年 芦屋市立美術博物館蔵
山崎つる子『作品』1964年 芦屋市立美術博物館蔵
展示風景:『作品』の前にあるのは藤本由紀夫の作業机
展示風景:『作品』の前にあるのは藤本由紀夫の作業机

 この他、会場では関連する資料や映像などから、これまで見えていなかった「作家の姿」も紹介する。

 美術館のコレクションは、「いつ見ても同じ」というイメージが先行し、コレクション展と銘打った展覧会への来館者は多くないのが現状だという。同館の大槻晃実学芸員は、「コレクションを展示し、学芸員が解説を書いて紹介するというのが定番だが、今回は現代の作家が、これまでの調査研究を参照しながら、自身でも研究を重ね、これまで見えていなかった新たな『作家像』を提案する画期的な試み。見る人は自由に見て、何か気になるものがあれば調べるなど、自分の見方を見つけてほしい」と話す。

芦屋市立美術博物館
芦屋市立美術博物館

「art resonance vol.01 時代の解凍」
2023年10月28日(土)~2024年2月4日(日)
芦屋市立美術博物館 (芦屋市伊勢町12-25)
休館日:月曜日(ただし1月8日は開館、1月9日は休館)、年末年始(12月28日~1月4日)
観覧料:一般800円、大高生500円、中学生以下無料
0797-38-5432
https://ashiya-museum.jp

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