「不幸の手紙」や「地雷バトン」「強制バトン」など、時代によってさまざまな形に変化し登場する「チェーンメール」。最近のチェーンメールは「ポジティブ」なものが多く、いわば「おまじない」のような役割を果たしているそうです。現在、TikTokで流行している「いいことが起こる音源」もそのひとつ。2023年の高校生トレンドランキングにもランクインするほど、話題の現象です。
「いいことが起こる音源」とは、「#いいことが起きる」というタグが付けられた音源動画を非公開で投稿することで“願いが叶う”といわれています。体や心がリラックスするような「ヒーリングミュージック」が主流で、流行し始めたのは2022年ごろから。「コロナ禍」が流行の要因として挙げられます。外出規制やマスク生活など、なにかと規制が多かった時代だったため将来に不安を持つ若者も多く、ストレス緩和目的に流行したのではないかと推測されます。
元々、チェーンメールはSNSで普及するまでは、「不幸の手紙」という文化が存在しました。「この手紙を10人に回さなければ不幸になる」などの文言が書かれた手紙を見かけた人も多いのではないでしょうか。2000年代になり、ブログやメールが一般的に浸透していくことで「チェーンメール」は誕生しました。「不幸の手紙」と同様に「病気になる」「呪われる」など、回さなければ身の回りに“良くない現象”が起こる.....という内容が特徴で、当時は「番組の企画でチェーンメールを回しています」などもあり、巧妙な手口で多くの人に広がりました。
打って変わって現在は「幸せ」に軸を置いたものが特徴です。さらに、それぞれの「個々の幸せ」を願うようなものが多く、人に送る・送られることはありません。「いいことが起こる音源」は、音源だけチェーンメールのように回ってきます。例えば「成績が上がりますように」「好きな人に告白されますように」などポジティブな願いが込められたものが多く、そういった願いを叶えたい人だけが使用できるようになっています。
効能があるかどうかは不明なものの、「個々で叶えたい願いを楽しむ」「幸せをシェアする」といった、ある種の“平和”に重きを置く令和世代の思考性が垣間見える話題ではないでしょうか。
(文=弘松メイ)