【番組】 今年は、シーズン途中に大黒柱のMFアンドレス・イニエスタ選手が退団するということもありました。そのなかでも、残った選手たちが奮起したところもあったと思いますが。
【田中】 アンドレスの退団というのは、皆さんにとって大きなことだったと思うのですが、簡単に言うと、サッカー界では(時として)あることなので。同じサッカー(というスポーツ)で戦っている部分で、選手が一番そういうこともあると理解していたんじゃないかなと、僕は想像しています。ただし、アンドレスも“紡いで”くれた1人であることには、これはもう絶対的に間違いないこと。いなくなった選手を含め、“紡いで”きたことが、最終的に結果につながったというのは、もう何回も言いますが、好循環というか、一体感というか、それにつながったんじゃないかなと思いますね。
【芥田】 吉田監督は優勝に際したインタビューの中で、チームでのコミュニケーションについて、「あまり選手としゃべらない、ピッチ(練習や試合の場)でしかしゃべらない」と仰っていますが……。
【田中】 タカさん本人は「あまりしゃべらない」と(メディアに)言っていますが、おそらくしゃべりながらコミュニケーションを取っているのかなとは思います……わかんないけど(笑)。特別なにか監督になってカッコつけているとかはないと思うし、タカさんはタカさんのままやっているのかなと感じますね。
【芥田】 常に本音でお話されているような感じでしょうか?
【田中】 そうです!
【番組】 2017年、まだ現役でヒデさんがプレーされている頃、吉田監督が最初の監督時代をともに過ごされていましたが、その時と今とで、何か風格が付いてきたな、変わってきたなと思うことはありますか。
【田中】 タカさんが現役を辞めて、その後、1度目の監督の時に一緒にやりましたが、今もそんなに変わっていないのかなとは思います。でも、たぶん、その(ここまでの)間も監督やコーチなどいろんな経験もありつつ、タカさん自身も成長しているでしょうし、なにせ優勝監督ですから! この1年の経験は、タカさんにとっても、選手、スタッフ、チームにとっても、今後につながる、すごくいい経験だったと思うので。(来シーズン以降)また違った“監督のタカさん”になっているんじゃないかなと思います。
【芥田】 ヴィッセル神戸といえば、阪神・淡路大震災とは切り離せない、復興とトモニ歩んできたクラブです。在籍時にはチャリティーマッチ(2015年1月に開催された「阪神・淡路大震災20年 1.17チャリティーマッチ」)なども経験されています。
【田中】 タカさんが発起人となったチャリティーマッチに出場させてもらいました。先ほど改めて写真も見たのですが、(初代「ミスターヴィッセル」永島昭浩氏や、三浦知良選手、三浦淳寛氏、宮本恒靖氏、現ヴィッセル強化部長の栗原圭介氏らをはじめとするそうそうたる)顔ぶれを見ると、(クラブが続いているのは)この方たちが“紡いで”きてくれたおかげでもありますし、歴史のあるチームなんだなというのは認識します。
今はどうかわからないですが、(在籍時は)1月17日に選手、スタッフ、サポーターが揃ってチーム始動をしていました。必ず1月17日に全選手で、阪神・淡路大震災の特集された映像などを通して、このチームができた歴史を見たりしていました。あと、「あの日の試練、ここに輝く」というサポーターの掲げていたもの(横断幕)は、すごくいろんなことを思い出させてくれたというか。いろんな思いがあるんだなと感じました。
【番組】 クラブの初代監督でヒデさんのヴィッセル在籍時(2006)にも指揮官を務めたスチュアート・バクスター氏をはじめ、多くの監督、選手がこの29年、ヴィッセルというチームの歴史を築いてきました。
【田中】 本当にたくさんの選手が、このチームに関わっていると思います。選手以外も、スタッフも含め、いろんな方がやっぱり紡いできたんだなと実感しますね。毎年勝つことを目標に(ヴィッセルに)選手が来てくれていますし、なかなかその時には結果は出なかったということもあったのですが、代表経験者であったり、ルーカス(ポドルスキ)、アンドレスらをはじめ、ドイツ代表、スペイン代表、ましてやワールドカップで優勝経験のあるすごい選手たちが来ることで、日本人選手に対する影響はかなり大きかったと思います。うまくいかない年、なかなか勝てない年、うまくいきそうだけどうまくいかなかった年、J2に落ちた年など、いろんなことを経験しながら、チームとして成長して、それ(優勝までの期間)が長いか短いかは人それぞれいろいろ思う部分はあると思いますが、29年の集大成をしっかり今年、今いる選手が優勝の形で表してくれたというのは、これは何回も言っていることですが、 “紡ぎ合わせる”、本当にそれに尽きると思います。