コロナ禍以降、人材不足により業務に支障をきたしている企業が増えているという。少子高齢化や、社会構造の変化による人材と企業のミスマッチがその理由とされている。殊に中小企業は、働き手の確保が喫緊の課題となっている。
そんな中、YouTubeを活用することで解決の糸口を見つけた企業が兵庫県神戸市にある。有限会社マグマ冷熱工業(神戸市長田区)だ。代表取締役の隅川英之さんに、業界の現状や、YouTubeの活用による成果などについて詳しく聞いた。
☆☆☆☆☆
同社は、空調設備機器の販売及び設計・施工を行っており、オフィス・学校・病院などに幅広く対応している。少し変わった社名は、「マグマは地球がなくなるまでなくならない。そういう会社にしたいという思いで先代である父親がつけた」のだそう。思いを受け継いだ経営者として、「常に顧客視点に立ち、本当に求められる商品・サービスを提供していきたい。信頼される会社作りを目指しています」と隅川さんは話す。
空調設備機器の取り換えや洗浄なども行う同社の需要は高い。というのは、1950年代半ばからの高度経済成長期にはマンションやビルが多く建ったが、内部の設備は10年から15年ほどで更新していかなければならないからだ。ただ、建設業界もやはり人材不足で、隅川さん曰く、有効求人倍率が8倍ほどにまで上昇している状況だそう。依頼を受けても人が足りていないために断っているケースが生じているという。
求人サイトに募集を出したこともあるが、仕事内容をあまり分かっていないまま応募してくる人もいたのだとか。そこで、まず業務内容を発信しようと考え、YouTubeを始めたという。「職人がどんな仕事をしているのかを動画にして投稿することで、すごくいい人材が集まりつつあります」と隅川さんは、その成果を語った。
実際に、動画を見て三か月前に入社した22歳の社員は、講習をしっかり受けながら並行して現場にも出て、隅川さんも驚くほどめきめきと実力をつけているそうだ。
隅川さんによると、空調設備工事の業界にはバイクなどの機械いじりが好きな人が向いているとのこと。「“空調設備工事”と言っても、電気もあれば機械もある。はたまた制御や建築はいろんなものが関わってくる。職人にうまく動いてもらうために最低限の広い知識は必要ですし、一つ一つの専門分野を追求できるような人が合います」(隅川さん)
現在、建築業界で活躍する人の中には年配の人も多く、あと数年で引退していくという状況が横たわる。隅川さんは、「(やがて)技術者がいなくなってしまいます。この技術を、若い人たちに継承していってほしい」と話し、「そのためには待遇や環境などをよくしていかないといけない。経営側がなんとか頑張っていかないといけないところ。9月に代表取締役に就任したばかりの若輩者ですが、頑張っていきます」と、人材確保の先にある次世代への継承も見据えて語った。
※ラジオ関西『こうべしんきん三上公也の企業訪問』2023年11月28日放送回より