神戸市と学校法人関西学院(兵庫県西宮市)は、同市灘区の王子公園に関西学院大学の新しいキャンパスを設置することで正式合意し、このほど基本協定を結んだ。
同市は昨年12月、動物園やスポーツ施設、緑の広場などから成る同公園の再整備を進める基本方針を策定した。合わせて、「王子スタジアム」を園内北側に移転させた跡地を中心とした約3.5ヘクタールに大学を誘致。公募に関西学院が応じ、今年6月、同学院が優先交渉権者に決まった。市は当該地を約100億円で売却する。
新キャンパスについて関西学院は、人文分野などの学部がある西宮市のキャンパスと理工学分野などを持つ三田市キャンパスからそれぞれ機能を部分的に移転、一部の教育課程を新設し「文理融合」の学び舎を作る考えで、学生数4000人、教職員200人規模を想定。学生の2割を海外からの留学生とし、国際化を図る。
市は、周辺に学生らが増えることによって街が賑わい、間接的な影響を含め年間116億円程度の経済波及効果を見込んでいる。今後は都市計画審議会や土地処分の議決などを経て、2026年度末に土地が引き渡される予定。2029~31年ごろの開学を目指す。
関西学院は1889年、当時、「原田の森」と呼ばれていた現在の王子公園の一角に開設。同地での草創期を経て1929年、西宮キャンパスに移転した。
会見で、同学院の村上一平理事長は「2029年は、西宮に移転してからちょうど100年。100年ぶりに神戸に戻ってくることになる。新キャンパスは、地元の皆さんにとって憩いの場となるだろう」と語った。関西学院大学の森康俊学長は、六甲の山並みの景観を損なわないよう配慮して校舎を建設することや一般の人に学内のレストランやカフェ、図書館などを開放する方針であることなどを説明した。
久元喜造市長は「王子公園の再整備は神戸市の将来にとってきわめて大事なプロジェクトと考えていた。関西学院大学に来てもらうことで若者世代が増え、国際交流も進む。さまざまな面で神戸にとってありがたい」と話した。
王子公園は1950年にオープン。阪急神戸三宮駅東隣の王子公園駅前に立地し、約19ヘクタールの園内に遊園地付きの動物園やスタジアム、テニスコートなどを有する。桜の名所としても知られ、憩いの場として広く市民に愛されてきた。
園内施設の老朽化などの点から、再整備に賛同する人がいる一方で、整備に伴う樹木の伐採、動物園のリニューアルについて懸念する声や整備自体に反対する意見も上がっていて、市は説明会や意見募集を実施してきた。
会見の中で、村上理事長は「(反対派に対し)今後は積極的に対応し、理解してもらうために努力したい」と述べた。