学生時代、皆さんはどんな通学カバンを使っていましたか? いまの学生たちを見ると、リュックタイプを主流としつつ、さまざまなブランド・デザインのものを使っている印象を受けます。
ファッショントレンドと同様に、時代が変われば流行していた通学カバンも変わるもの。1960~70年代、昭和世代に爆発的な人気を誇った「マジソン・スクエア・ガーデンバッグ」について、エース株式会社の難波さんに話を聞きました。
―――いつ発売された?
【難波さん】 東京の百貨店からオリジナルのスポーツバッグの開発を依頼されたことをきっかけに、1968(昭和43)年に発売を開始しました。
当時、一般的なスポーツバッグとしてかまぼこ型のボストンバッグは多く流通していましたが、デザインに横文字(英語)が入ったカバンとして日本で初めて発売されたのが「マジソン・スクエア・ガーデンバッグ」なんです。
―――当時、横文字はまだ一般的ではなかった?
【難波さん】 そうですね。昭和42〜43年ごろから、JUN(ジュン)やVAN(バン)をはじめとしたアメリカのカジュアルブランドが日本でも定着しはじめ、横文字の入ったトレーナーやスタジャンなどが数多く流通するようになりました。そういった時代の流れもあり、これまでになかった“横文字デザイン”をあしらったバッグを開発しました。
―――「MADISON SQUARE GARDEN」の文字を選んだ理由は?
【難波さん】 「マジソン・スクエア・ガーデン」は、アメリカにおいて“スポーツの殿堂”と呼ばれている場所なんです。当時、日本では一大プロレスブームが訪れており、ジャイアント馬場、アントニオ猪木という不世出のスーパースターがプロレス界に君臨していました。外国人レスラーをバタバタとなぎ倒していく姿は日本人の憧れでもあり、戦後復興した日本の夢や希望だったのだと思います。
「ただ単に英文字を入れるのではなく、誰もが憧れるような場所を」と考えた結果、プロレスやボクシングなどの格闘技の殿堂で、日本人が憧れる夢の競技場である「MADISON SQUARE GARDEN」のロゴが採用されたそうです。
―――1968年、東京の百貨店で発売されてすぐに話題になった?
【難波さん】 東京で販売が開始されたのですがなかなか数字が伸びず、担当者の異動などもあって、実は一旦引き上げているんです。
―――では、どのようにしてブームに?
【難波さん】 東京から引き上げたあと、外国の雰囲気が感じられる港町・神戸へと場所を移して販売することになりました。神戸の女子高生から大変な人気を得て口コミで広がっていき、爆発的なヒットに。
学生らしいカバンの色・“自由の国”アメリカへの憧れ、という点から港町で受け入れられたので、同じシチュエーションの横須賀でも販売をはじめ、そこから全国へと広がっていきました。