いろいろな物語が作品の中に 兵庫県立美術館コレクション展Ⅲ 「生誕180年記念 呉昌碩の世界」も | ラジトピ ラジオ関西トピックス

いろいろな物語が作品の中に 兵庫県立美術館コレクション展Ⅲ 「生誕180年記念 呉昌碩の世界」も

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 兵庫県立美術館が所蔵するコレクションの中から、テーマに沿って学芸員がセレクトした作品を紹介する「コレクション展Ⅲ」が兵庫県立美術館で開催されています。今年度3回目となる今回は「物語」をテーマに、約180点を紹介するほか、近代中国の書画篆刻に大きな足跡を残した呉昌碩(ごしょうせき)の生誕180年を記念した小企画も同時開催します。2024年4月7日(日)まで。

「兵庫県立美術館のコレクション展は、担当する学芸員がそれぞれの個性を生かし、毎回違ったものになっている」と林洋子館長は話します。今回は「美術の中の物語」を特集します。

展示風景:「コレクション展Ⅲ 美術の中の物語」
展示風景:「コレクション展Ⅲ 美術の中の物語」

 物語と関わりのある美術作品は、これまでに多く制作されてきました。神話や聖書を題材にしたものや、小説の挿絵、作者自身が思い描く物語など様々です。

 明治時代の教科書に載っていたという神中糸子(じんなかいとこ)の『桃太郎』では、川を流れる桃が小さく描かれています。「私たちがよく知る昔話は、大きな桃から桃太郎が生まれてくるというストーリーですが、リアルに描きたいという作家の欲求の中でどのように描くか、イマジネーションや独創性を働かせた。桃を小さく描くことでファンタジーを回避し、作家による物語の解釈を表現したと考えられます。そこも注目してほしい」と安永幸史学芸員は話します。

神中糸子「桃太郎」兵庫県立美術館蔵
神中糸子「桃太郎」兵庫県立美術館蔵

 小説などの挿絵は、ストーリーがあってそれに合わせた絵を描くだけではなく、絵がイマジネーションを広げ、物語をリードすることやテキストを超えることもあるほか、独自の解釈を加えることもあるといいます。また、作家自身が想像する物語や個人的な体験を作品に込めることもあります。阿部合成(あべごうせい)の『見送る人々』に描かれているのは日中戦争下で出征する兵士を見送る人々ですが、その片隅に「不気味な人物」がいます」と、安永学芸員は解説します。

 また、関西写壇物語と題して、ナチスから迫害を受け避難してきたユダヤ人を捉えた作品(『流氓ユダヤ』)を展示しています。このシリーズは、戦争で報道写真の存在が増す中、芸術的な写真表現を見出したのではないかとされ、写真界全体からも注目されました。安井仲治(やすいなかじ・2月12日まで同館で特別展開催)と中山岩太(なかやまいわた)という兵庫県ゆかりの「2人の写真家」の作品も展示しています。

展示風景:「小企画 生誕180年記念 呉昌碩の世界ー海上派と西泠名家ー」
展示風景:小企画 「生誕180年記念 呉昌碩の世界ー海上派と西泠名家ー」

 一方、小企画として、「生誕180年記念 呉昌碩の世界-海上派(かいじょうは)と西泠名家(せいれいめいか)-」と題し、清末から中華民国時代に活躍した呉昌碩の作品を展示します。呉昌碩(1844~1927)は「清朝最後の文人」と言われ、生涯にわたって古代文字である石鼓文(せっこぶん)の臨書に励み、その力強い筆跡を書・画・篆刻に活かし、中国だけではなく日本でも人気を集めました。本展では梅舒適コレクションを中心に、その業績と交友関係を回顧します。

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